司法試験民法短答式試験過去問H30第29問―【不法行為】

みなさん、こんにちは!

今日は、民法過去問H30の第29問を解説していきます。

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〔第29問〕(配点:2)
不法行為に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№29])
ア.精神上の障害により責任無能力者となった夫と同居する妻は,責任無能力者である夫を監督する法定の義務を負う者として,夫が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
イ.請負人がその仕事について第三者に損害を加えた場合には,その注文又は指図について注文者に過失があったときを除き,注文者は,その損害を賠償する責任を負わない。
ウ.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じた場合において,その工作物の所有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは,その工作物の占有者が,その損害を賠償する責任を負う。
エ.動物の占有者は,その動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは,その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負わない。
オ.交通事故により傷害を受けた者が搬送先の医師の診療上の過失により死亡した場合には,交通事故の加害者と医師が被害者の被った損害について連帯して賠償する責任を負うことはない。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001258877.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001259697.pdf

アについて

精神上の障害により責任能力を欠く者は賠償の責任を負うことはなく、その場合には監督義務者が責任を負うことになります。ただし、故意や過失による場合はこの限りでありません(民法713条)。

ここで配偶者が監督義務者に該当するかが問題となりますが、最高裁平成28年3月1日判決では「精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法714条1項にいう『責任能力者を監督する法定義務を負う者」に当たるとすることはできない」としています。

そのため、解答は✖となります。

 

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イについて

注文者は請負人がその仕事で第三者に加えた損害を賠償する責任を負いませんが、注文者の指図に過失があった場合はこの限りではありません(民法716条)。

そのため、解答は〇となります。

ウについて

土地の工作物の設置・保存に瑕疵があって他人に損害が生じた場合には、工作物の占有者が被害者に対して損害を賠償する責任を負います(民法717条1項)。

ただし、占有者が損害の発生防止に必要な注意をしていたときには、所有者がその損害を賠償しなければなりません(民法717条1項但し書き)。

そのため、解答は✖となります。

エについて

動物の占有者は動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負いますが(民法718条1項)、動物の種類や性質に従って相当の注意をもって管理したときには、責任を負うことはありません(民法718条1項但し書き)。

そのため、解答は〇となります。

オについて

数人が共同の不法行為で他人に損害を加えた場合は、各自が連帯して損害を賠償する責任を負うことになり、共同行為者のうちのいずれかのものがその損害を加えたか知ることができないときも同様とされます(民法719条)。

問題では①交通事故の傷害②診療上の過失があったとされ、共同の不法行為で損害を加えたと考えることができます。

そのため、解答は✖となります。

以上、ア=ウ=オ=×・イ=エ=〇なので解答は4となります。

 

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