司法試験平成29年民法短答式試験第37問【契約の第三者に対する効力】

みなさん、こんにちは!

今日は【契約の第三者に対する効力】を解説していきます。

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〔第37問〕(配点:2)

契約の第三者に対する効力に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№37])

ア.建物建築工事請負契約において,注文者と請負人との間に,契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合に,当該契約が中途で解除されたときは,その請負人が下請負人に当該工事を請け負わせ,下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても,当該出来形部分の所有権は注文者に帰属する。

イ.債務者と引受人との間の契約でする併存的債務引受は,債権者が引受けによる利益を享受する意思を表示しなくても,その効力が生ずる。

ウ.委任による代理人が適法に復代理人を選任した場合において,その復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭その他の物を受領したときは,復代理人は,本人に対して受領物を引き渡す義務を負う。

エ.受寄者が寄託された宝石を適法に第三者に保管させたときは,その第三者は寄託者に対して,保管費用の償還を請求することができる。

オ.賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,転借人は賃貸人に対して,賃借物の修繕を請求することができる。

1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ

問題『http://www.moj.go.jp/content/001224569.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001225946.pdf』 

アについて

判例:最高裁判決平成5年10月19日

判決ではアのように述べられているので、解答は◯となります。

 

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イについて

判例:最高裁判決昭和30年9月29日

判例では「 債務を伴う契約上の地位の譲渡契約は、債権者の承諾がないときは債権者に対し効力を生じない」と述べられます。

契約上の地位の譲渡契約は、債権者の承諾がなければ債権者に対して効力を生じないので、併存的債務引受の場合に意思表示がなければ効力は生じません。

そのため、解答は✖となります。

ウについて

判例:最高裁判決昭和51年4月9日

判例では「 本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結された場合において、復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅する」と述べられます。

判例より明らかなので解答は◯となります。

エについて

民法665条

第646条から第650条まで(同条第3項を除く。)の規定は、寄託について準用する。

民法650条

受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

委任者は受任者に対して費用償還請求権が認められていることから、受寄者に寄託された第三者も費用償還請求権が認められると考えられます。

そのため、解答は◯となります。

オについて

民法613条1項

賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。 

賃借人が適法に賃借物を転貸した場合は、転借人は賃貸人に対して対抗できないので解答は✖となります。

 

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