司法試験民法短答式試験過去問H30第11問―【所有権の取得】

みなさん、こんにちは!

今日は、民法過去問H30の第11問を解説していきます。

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〔第11問〕(配点:2)
所有権の取得に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№11])
ア.AがA所有の甲土地をBに譲渡し,Bが甲土地上に立木を植栽して明認方法を施した場合において,その後,AがCに甲土地を譲渡して,Cに対する所有権移転登記をしたときは,明認方法が存続していたとしても,BはCに対して,立木の所有権を対抗することができない。
イ.AがBに対して,完成した建物の所有権の帰属について特約をせずに,A所有の土地上に建物を建築することを注文したところ,Bが自ら材料を提供して建前を建築した段階で工事を中止した場合(その時点における時価400万円相当)において,Aから残工事を請け負ったCが自ら材料を提供して当該建前を独立の不動産である建物に仕上げ(その時点における時価900万円相当),かつ,AがCに代金を支払っていないときは,当該建物の所有権は,Cに帰属する。
ウ.Aの所有する船舶(時価600万円相当)に,Bの所有する発動機(時価400万円相当)が取り付けられた場合において,損傷しなければこれらを分離することができず,主従の区別がつかないときは,当該発動機付船舶は,3対2の割合でAとBが共有する。
エ.Aが所有する建物を賃借したBがAの同意を得て増築をした場合には,その増築部分について取引上の独立性がなくても,増築部分の所有権は,Bに帰属する。
オ.Aの所有する液体甲(100立方メートル)が,Bの所有する液体乙(10立方メートル)と混和して識別することができなくなり,液体丙(110立方メートル)となった場合において,Aが液体丙の所有権を取得したときは,BはAに対し,不当利得の規定に従い,その償金を請求することができる。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001258877.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001259697.pdf

アについて

昭和41年10月21日判決の要旨では以下のように述べられています。

地盤上に植栽された立木の所有権を取得した者は、明認方法等の対抗要件を備えないかぎり、右地盤(土地)を地上の右立木とともに買いうけ右土地についてその所有権移転登記を経由した第三者に対し、前記立木所有権取得を対抗することができない。 

この要旨にあるように、明認方法等の対抗要件を備えていれば、その土地が第三者に譲渡されたとしても、所有権を対抗することができます。

よって、解答は✖となります

イについて

特約がないためどちらが材料を提供したかによって所有権の帰属が決まりますが、この場合はCが全部を提供しています。

さらに、Aが代金を支払っていないことで建物が引き渡されていない状態であるといえるので、建物の所有権はCに帰属しています。

よって、解答は〇となります。

 

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ウについて

民法244条では以下のように規定されています。

付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。

 出典『民法第244条 - Wikibooks

244条にあるように動産が符合して区別がつかなくなった場合には、動産の所有者は付合時の価格の割合で共有することができるとされます。

今回の場合であればA:600万円・B:400万円ですので、3:2の割合で共有することになります。

よって、解答は〇となります。

エについて

昭和44年7月25日判決の要旨では以下のように述べられています。

建物の賃借人が建物の賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の上に二階部分を増築した場合において、右二階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、右二階部分につき独立の登記がされていても、右二階部分は、区分所有権の対象たる部分にはあたらない。 

ここにあるように賃借人が同意を得て増築して、その部分に独立の登記がされていたとしても区分所有権の対象とはならないとされています。

つまり、賃貸人に所有権が属すると理解できるので、解答は✖となります。

オについて

248条では、民法242条~246条までの規定の適用で損失が生じた場合には、703条・704条の規定に従って償金を請求することができるとされています。

これは混和の場合も同様ですので、解答は〇となります。

以上、ア=エ=×・イ=ウ=オ=〇なので解答は2となります。

 

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