司法試験民法短答式試験過去問H30第10問―【不動産物権変動】

みなさん、こんにちは!

今日は、民法過去問H30の第10問を解説していきます。

スポンサードリンク

 

〔第10問〕(配点:3)
不動産物権変動に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№10])
ア.未成年者AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bが,Aの未成年の事実を過失なく知らないCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合において,AがBに対する売買の意思表示を取り消したときは,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。
イ.AがA所有の甲土地をBに売却し,その代金が未払である間に,AからBへ所有権移転登記がされた後,Bが,Bの代金未払の事実を知っているCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合において,AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除したときは,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。
ウ.AがA所有の甲土地をBに売却したが,代金の支払をめぐってAB間で争いを生じ,その後,Bが甲土地の所有権を有することを確認する旨の示談が成立した場合において,当該示談に立会人として関与し,示談書に立会人として署名捺印していたCが,AからBに所有権移転登記がされる前に,Aに対する債権に基づいて,A名義の甲土地を差し押さえ,その旨の差押えの登記がされたときは,Bは,Cに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。
エ.AがA所有の甲土地をBに売却した後,CがBを害する目的で甲土地をAから買い受け,その旨の所有権移転登記がされた場合において,Cが事情を知らないDに対して甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされたときは,Bは,Dに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。
オ.BがA所有のA名義の甲土地を占有し,取得時効が完成した後,CがAから甲土地について抵当権の設定を受けて抵当権設定登記がされた場合において,Bがその抵当権の設定の事実を知らずにその後引き続き時効取得に必要な期間甲土地を占有し,その期間経過後に取得時効を援用したときは,Bは,Cに対し,抵当権の消滅を主張することができる。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ オ 5.ウ エ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001258877.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001259697.pdf

アについて

単に権利を得たり、義務を免れる行為・法定代理人が処分を許した財産については、親の同意を得なくても有効に行うことができます。

それ以外の行為は法定代理人の同意が必要で、それがないと有効になりません。よって、解答は〇となります。

イについて

 

スポンサードリンク

 

ウについて

最高裁昭和43年11月15日判決の要旨では以下のように述べられています。

甲はすみやかに乙に対しその所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した場合において、丙が立会人として右示談交渉に関与し、かつ、右和解条項を記載した書面に立会人として署名捺印した等判示の事情があるときには、丙は、いわゆる背信的悪意者として、乙の右所有権取得登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらないものというべきである。

甲乙の関係で示談交渉に関与したのちに差押えなどを行った丙は背信的悪意者となることが示されています。

背信的悪意者は民法177条にいう第三者に該当しないことから、保護されることはありません。

そのため、この場合であればBはCに対して所有権の取得を主張することができます。よって、解答は✖となります。

エについて

最高裁平成8年10月29日判決の要旨では以下のように述べられています。

 所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、甲から丙が当該不動産を二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる。

要旨にあるように、背信的悪意者からの譲渡を受けた転得者は、背信的悪意者とみなされない限り所有権を主張することができるとされています。

つまり、この場合は背信的悪意者からの転得者丙が登記を備えているため、登記のない乙は丙に対して所有権を主張することができません。

よって、解答は✖となります。

オについて

債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

出典『民法第397条 - Wikibooks

民法397条にあるように、抵当不動産について取得時効が完成した際には抵当権が消滅するとされています。

そのため、解答は〇となります。

www.eityan-houritu.site

 

スポンサードリンク