司法試験民法短答式試験過去問解説H28第5問【時効の援用】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第5問を解説していきます。

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〔第5問〕(配点:2)
時効の援用に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№5])

ア.抵当不動産の第三取得者は,その抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。

イ.先順位抵当権の被担保債権の消滅により後順位抵当権者に対する配当額が増加する場合,当該後順位抵当権者は,先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。

ウ.詐害行為の受益者は,詐害行為取消権を行使している債権者の被保全債権について,その消滅時効を援用することができない。

エ.譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に譲渡担保の目的物を第三者に譲渡したときは,その第三者は譲渡担保権設定者が譲渡担保権者に対し有する清算金支払請求権の消滅時効を援用することができる。

オ.建物の敷地所有権の帰属につき争いがある場合において,その敷地上の建物の賃借人は,建物の賃貸人が敷地所有権を時効取得しなければ建物賃借権を失うときは,建物の賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することができる。

1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

最高裁昭和48年12月14日判決では「 抵当不動産の譲渡を受けた第三者は、抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる」とされているため、解答は◯となります。

理由は抵当不動産を取得した第三者は、その抵当権の被担保債権が消滅すれば抵当権の消滅を主張できる関係にあり、抵当債権の消滅で直接利益を受ける者に当たるからだとされています。

 

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イについて

まず、民法145条では時効は当事者が援用しなければ裁判所は裁判できないとされていますが、この「当事者」は時効で直接に利益を受ける者とされています。

判例では、先順位抵当権の被担保債権が消滅すると、後順位抵当権者の順位が上昇して被担保債権に対する配当額が増加する可能性もある。

ただし、この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇でもたらされる「反射的な利益にすぎない」とされています。

このように述べて、後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅で「直接」に利益を受ける者に該当せず、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できないとしました。

そのため、解答は✖となります。

 

ウについて

最高裁平成10年6月22日判決では「 詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権の消滅時効を援用することができる」とされているため、解答は✖となります。

理由は、詐害行為の受益者は詐害行為取消権の直接の相手方であり、これが行使されると債権者との間で詐害行為が取り消され、その行為で得ていた利益を失う関係にあり、その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すると利益を失うことを避けられる地位にあるから、債権者の債権の消滅で直接利益を受ける者に該当するからだとされています。

エについて

判例では「譲渡担保権者から被担保債権の弁済期後に譲渡担保権の目的物を譲り受けた第三者は、譲渡担保権設定者が譲渡担保権者に対して有する清算金支払請求権につき、消滅時効を援用することができるものと解するのが相当」とされています。

そのため、解答は◯となります。

オについて 

最高裁昭和44年7月15日判決では「 建物賃借人は、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできない」とされているため、解答は✖となります。

理由は上告人らは敷地の取得時効の完成で直接に利益を受ける者には該当しないからであるとされています。

以上、ア=エ=◯・イ=ウ=オ=✖なので解答は2となります。

 

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