司法試験民法短答式試験過去問解説H28第22問【契約】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第22問を解説していきます。

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〔第22問〕(配点:2)

契約に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№22])

ア.贈与は,当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し,相手方が受諾をすることによって,その効力を生ずるから,贈与を受ける者が贈与の申込みをし,相手方がこれを承諾しても贈与の効力は生じない。

イ.売買契約において瑕疵担保責任を免除する特約がある場合であっても,その当時売買の目的物について瑕疵があることを売主が知りながらその瑕疵があることを告げなかったときには,売主は瑕疵担保責任を免れない。

ウ.判例によれば,AがB所有の甲建物を賃貸権限を有しないCから賃借している場合において,BがAに甲建物の明渡しを求めたときは,Aは,甲建物を使用収益することができなくなるおそれが生じたものとして,Cに対し,それ以降の賃料の支払を拒絶することができる。

エ.賃借人が適法に賃借物を転貸した場合において,賃貸人が賃借人に対し賃借物の修繕義務を負うときは,賃貸人は,転借人に対しても直接に賃借物の修繕義務を負う。

オ.有償の金銭消費寄託契約において,当事者が返還の時期を定めなかったときは,寄託者は,受寄者に対し相当の期間を定めて催告をしなければ,金銭の返還を請求することができない。

1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

民法549条では「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」とされています。

基本的には贈与者が受贈者に対して意思表示をするものですが、受贈者が贈与者に対して贈与を申し込んでそれに対して贈与者が意思表示をすることも、贈与者の意思に適っているということができるでしょう。

そのため、解答は✖となります。

イについて

民法572条では「売主は、第560条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない」とされています。

ここにあるように、瑕疵を知りながら告げなかった場合には責任を負うことになります。そのため、解答は◯となります。

ウについて

最高裁昭和50年4月25日判決では「 土地又は建物の賃借人は、賃借物に対する権利に基づき自己に対して明渡を請求することができる第三者からその明渡を求められた場合には、それ以後、賃料の支払を拒絶することができる」とされています。

そのため、解答は◯となります。

履行不能になると解除権は発生しますが、行使しないと契約は終了しないことになります。ただ、それに関して判例では履行不能になった時点で契約が終了するとされています。

エについて

適法に賃貸借を行っている場合に賃貸人が修繕義務を負うのは賃借人(転貸人)であり、転借人臭うのではありません。そのため、解答は✖となります。

一方、転借人は賃貸人に対して修繕する請求を行う権利を持っていませんが、賃借人の賃貸人に対する修繕請求権を代位行使することが可能となっています(民法423条1項)。

オについて

消費寄託に関して

第五節(消費貸借)の規定は、受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。
前項において準用する第591条第1項の規定にかかわらず、前項の契約に返還の時期を定めなかったときは、寄託者は、いつでも返還を請求することができる。

出典『民法第666条 - Wikibooks

返還時期に関して

当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。

出典『民法第591条 - Wikibooks

666条1項で消費貸借の規定を準用していますが、2項で591条の規定に関係なく契約の時期を定めなかった場合には、寄託者はいつでも返還を請求できるとしています。

ここが消費貸借と消費寄託の違いとなっており、オの解答は✖となります。

 

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