司法試験民法短答式試験H28第36問

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第36問を解説していきます。 

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〔第36問〕(配点:3) A所有の甲土地に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№36])

ア.Aは,BからBの取引上の信用のために,甲土地の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,Bから甲土地を譲り受けたCが,仮装譲渡について善意のときは,登記を備えていなくてもAに対して甲土地の所有権取得を主張することができる。

イ.Aは,BからBの取引上の信用のために,甲土地の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,Bの死亡によりその単独相続人として所有権移転登記を了したCが,仮装譲渡について善意のときは,Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。

ウ.Dは,建物所有を目的としてAから甲土地を賃借し,甲土地上に乙建物を建築してD名義で乙建物の所有権保存登記を有している。Aは,BからBの取引上の信用のために,甲土地の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,Bから甲土地を仮装譲渡であることについて善意で譲り受けて登記を備えたCは,仮装譲渡であることをDが知っていたときは,甲土地の賃借権を否定することができる。

エ.Aは,BからBの取引上の信用のために,甲土地の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,Bから甲土地を仮装譲渡であることについて善意で譲り受けたCから更に甲土地を譲り受けて登記を備えたDは,仮装譲渡について悪意であったとしても甲土地の所有権を取得する。

オ.Dは,建物所有を目的としてAから甲土地を賃借し,甲土地上に乙建物を建築してD名義で乙建物の所有権保存登記を有している。Dは,BからBの取引上の信用のために,乙建物の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,仮装譲渡であることを知らなかったAは,Bに対して,賃借権の譲渡を承諾し,地代の支払を求めることができる。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

民法94条2項
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できず、善意のCは所有権取得を主張できます。そのため、解答は◯となります。

イについて

94条2項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者及びその包括継承人以外の者であり、イのCは包括継承人である相続人です。 そのため、Cは第三者に該当せず善意であってもAに対して所有権取得を主要できないため、解答は✖となります。

ウについて

虚偽表示によってABの売買契約は無効となりますが、Cはそれについて善意なので94条にいう第三者に該当します。

ただ、ここでは所有権移転登記を行って土地の賃借権を有するDがいて、両者は土地の利益を争う関係にあります。

そうすると、177条を適用して対抗関係として処理することになり、本件では先に登記を備えたDが勝ちます。そのため、解答は✖となります。

エについて

善意の第三者から目的物を取得した転得者が悪意であっても有効に所有権を取得できるのが判例の立場であることから、解答は◯となります。

オについて

Aは土地の賃貸人であり、DBの建物の譲渡について「新たに独立した法律上の利害関係を有する者」ではありません。

そうすると、94条2項に該当せずDBはAに対して建物の仮装譲渡が無効であることを主張でき、Aは地代の支払いを請求することはできません。

そのため、解答は✖となります。以上、ア=エ=◯・イ=ウ=オ=✖なので解答は2となります。

 

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