民法司法試験過去問H29第8問【物権・地上権】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験民法の物権の消滅に関する問題を解説します。

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〔第8問〕(配点:2) 物権の消滅等に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを 組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№8])
ア.AとBが甲土地を共有している場合において,Aがその共有持分を放棄したときは,Aの 共有持分はBに帰属する。
イ.A所有の甲土地には,第一順位の抵当権を有しているBと第二順位の抵当権を有している Cがおり,他には抵当権者がいない場合,CがAから甲土地を譲り受けたときでもCの抵当 権は消滅しない。
ウ.A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ, 甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,甲土地にCのための抵当権 が設定され,その旨の登記がされた場合には,その後にAが単独でBを相続したときでも, その地上権は消滅しない。
エ.AとBは,建物所有目的で,CからC所有の甲土地を賃借した。その後,Cが死亡してA が単独で甲土地を相続した場合,Aの賃借権は消滅しない。
オ.A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ, 甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,乙建物にCのための抵当権 が設定され,その旨の登記がされた。その後,Bは,Aに対し,その地上権を放棄する旨の 意思表示をした。この抵当権が実行され,Dが乙建物を取得した場合,Dは,Aに対し,地 上権を主張することができない。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ

司法試験 H29 問題』 『司法試験 H29 解答

アについて

Aが共有持分を放棄した場合に、その甲土地でAが共有していた分がBの持ち分になるのかが争点です。

この点について、255条では、持ち分を放棄した場合は他の共有者の持ち分に属すると規定されているため、アの答えは「〇」になります。

これは、放棄することによって最初からその物を共有していなかったことになるということから導かれます。

イについて

イの問題は、ウ・エと同じ混同のパターンになります。

179条但し書きで、権利が同一人に帰属した場合にはその権利は消滅しますが、その権利が第三者の権利の目的の場合には消滅することはありません。

イでは、甲土地の所有権・抵当権が同一人に帰属しており、これは第三者の権利の目的となっていると言えませんから、Cの抵当権は消滅することになります。よって、Cの答えは「×」となります。

 

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ウについて

ウの問題は、イの問題と同様に混同のパターンです。

つまり、ウの問題では、AがBを相続したことで地位に混同が生じていますが、地上権が消滅すると地上権に対して設定されているCの抵当権も消滅することになるため、Cを保護する必要があります。

そのため、この場合には、抵当権が消滅しないため、ウの答えは「〇」となります。

エについて

エの問題は、土地の所有権と賃借権が同一人に帰属した「混同」のパターンですが、これは179条1項但し書きの類推適用として判例では扱われています。

最高裁昭和46年10月14日の判決では、土地の賃借権に対抗要件が設定された後に抵当権が設定されていれば、賃借権は消滅しないとしています。

よってエの答えは「〇」となります。 この問題では、賃借権に179条但し書きが直接適用されるのではなく、「類推適用」だという点に注意しておきましょう。

オについて

オの問題は、地上権に対して抵当権が設定されているものの、地上権が放棄された後に抵当権が実行され、その建物を取得した者が地上権を主張できるかが争点です。

まず、地上権は放棄したものの消滅はしていないため、抵当権も消滅していません。

さらに、抵当権が実行されてDがその「地上権の消滅していない建物」を取得しているわけですから、Dは地上権を主張することができます。

よって、答えは「×」となります。

以上より、ア=ウ=エ=〇、イ=オ=×となり答えは「3」となります。

今回の過去問では、地上権の混同が出題されましたが、混同は数パターンあるため、どの場合に第三者の権利が消滅しないのかしっかり復習しておきましょう。

 

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