司法試験民法問題解説H29年第4問【虚偽表示】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H29年第四問の虚偽表示の問題を解説します。 

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〔第4問〕(配点:2) 虚偽表示に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№4])

ア.甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地をBに仮装譲渡し,AからBへの所有権移転登記がされた後,Bの債権者Cが甲土地を差し押さえた場合において,その差押えの時にCが仮装譲渡について善意であったときは,Aは,Cに対し,Bへの譲渡が無効であることを主張することができない。

イ.甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地をBに仮装譲渡した後に,CがBとの間で甲土地についてCを予約者とする売買予約を締結した場合,仮装譲渡についてCが予約成立の時に善意であっても,予約完結権行使の時に悪意であれば,Cは,Aに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

ウ.甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地にBのための抵当権設定を仮装した後,その抵当権設定が仮装であることについて善意のCがBから転抵当権の設定を受け,その旨の登記がされた場合には,Aは,Cに対し,原抵当権の設定が無効であることを主張することができない。

エ.甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地をBに仮装譲渡し,AからBへの所有権移転登記がされた後に,Bが死亡した場合において,Bが死亡した時にBの相続人であるCが仮装譲渡について善意であったときは,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

オ.甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地をBに仮装譲渡し,AからBへの所有権移転登記がされた後に,BがCに甲土地を譲渡し,さらに,CがDに甲土地を譲渡した場合において,Cが仮装譲渡について悪意であったときは,Dが仮装譲渡について善意であったとしても,Aは,Dに対し,甲土地の所有権を主張することができる。

1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

司法試験 H29問題』 『司法試験 H29解説

前提

司法試験H29の第4問は虚偽表示の問題となっているため、まずは虚偽表示で保護される善意の第三者を見ていきましょう。

虚偽表示で保護される第三者

①不動産を譲り受けた者から、さらにその不動産を譲り受けた者

②仮装譲渡された不動産に抵当都権を設定した者

③仮装の抵当権者から抵当権を譲り受けた転抵当権者

④虚偽表示の行為にある目的物を差し押さえた債権者

⑤仮装の債権を譲り受けた者

虚偽表示で保護されない第三者

①一番順位の抵当権が放棄され、それによって抵当権の順に上昇したと誤信した二番順位の抵当権者

②代理人や法人の代表者・理事などが虚偽表示をした場合の法人・本人

③債権の仮装譲渡人からその債権を取り立てるために債権を譲り受けた者

④仮装名義人の単なる債権者

⑤仮装譲渡された債権の債務者

⑥土地の仮想譲受人が土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸したときの賃借人

アについて

まず、AとBの間で虚偽表示である仮装譲渡・登記の移転が行われ、それを信用したBの債権者Cが甲土地について差押えをしている事例です。 

Cが善意であることは述べられている上、Cは虚偽表示の目的物である甲土地を差押えていることから差押債権者であることが分かり、上記の④にあたります。Cは善意かつ第三者に当たりますから、Aは虚偽表示の譲渡の無効を主張できないため答えは「〇」になります。

 

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イについて

イにおいても、AとBが通謀し甲土地をBに仮装譲渡し、その土地の売買契約をBはCと締結しています。ここで問題になるのは、売買予約時に善意であれば予約完結権行使時に悪意でも第三者として保護されるのかということ。

この点について最高裁は、第三者が善意か悪意であるかを決めるのは「法律関係につき第三者が利害関係を有するに至った時期を基準として決すべき(判例)」としていることから、この問題では予約完結権の行使、つまり契約の完了の時点を基準に判断されます。

そのため、たとえ売買予約をした際に善意でも、予約をしただけであってそのときに利害関係は発生しておらず、予約完結権を行使する際に利害関係が発生し、この時にCが悪意であるなら第三者として保護されません。

よって、CはAに対して甲土地の所有権を主張することができず、答えは「〇」になります。

ウについて

Aの甲土地に対してBが抵当権を設定したことを虚偽表示とし、抵当権設定について善意のCが転抵当権の設定をした場合であり、これは善意の第三者として保護されるための要件の③にあたります。

そのため、Cが善意であり保護される第三者に当たることから、AはCに愛し抵当権の設定が無効であると主張できません。よって答えは「〇」になります。

エについて

AとBが通謀して甲土地をBに仮装譲渡し、その後Bが死亡して仮装譲渡について善意のCがその地位を継承した場合についての問題です。

この点につき、判例は、第三者の意味を「虚偽表示の当事者または一般(包括)承継人以外の者」であると判断しており、このことからCは虚偽表示で保護される第三者には当たらないため、Aは仮装譲渡の無効を主張できます。よって、問題文の最後が間違っているため答えは「×」となります。

オについて

AとBが通謀して甲土地をBに仮装譲渡し、その土地をBが仮装譲渡について悪意のCに譲渡、さらにCは仮装譲渡について善意のDへ譲渡した場合、第三者はどちらを基準にするのかが問題です。

この点につき判例は、悪意の者からの転得者であっても善意であれば94条にいう第三者にあたりるとしています。このことから、Dが善意であり第三者として保護されるため、Aは甲土地の仮装譲渡が無効であると腫瘍できず、答えは「×」になります。

以上より、ア=イ=ウ=〇、エ=オ=×ということで答えは「5」となります。第三者の要件を押さえないと解けない問題でしたので、保護される第三者・保護されない第三者の基準を明確にしておきましょう。

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