民法講座~物件総則と不動産に関する物権変動

みなさん、こんにちは!

今日は、物権総則と不動産の物権変動を解説していきます。

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物権の創設

物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。『民法175条

解説

物権はというのは、法律で定められた以外で作り出すことができません。これは、物権を法律で定めることで、その安全性などを確保しようという目的で物権法定主義が定められています。

物権法定主義の例外

物権は法律でしか定められませんが、判例において法律で定められていない物権については慣習法による物権も認められるとしています。

例)温泉(専用)権、水利権(流水利用権)など

物権の設定及び移転

物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。『民法176条

解説

物権を設定したり移転する場合には、当事者間の意思表示でその効果が発生します。そのため、書類を書いたりすることなく物権を設定・移転することができます。物権を設定・移転・破棄したりすることは、物権変動と一般に呼ばれています。

物権変動の方法

意思主義

176条のように意思表示だけで物権変動の効果が発生することを意思主義と呼んでいます。

形式主義

意思主義に対して、登記などの移転によって物権変動の効果を生じさせることを形式主義といいます。

 

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 不動産に関する物権の変動の対抗要件

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。『民法177条

解説

不動産に関する物権変動では、不動産登記法に定められたことに従って登記をしなければ、第三者に対抗することはできません。そのため、「俺には所有権その他の物権がある!」と主張しても、登記がなければ第三者には対抗することができません。

対抗要件

「第三者に対抗することができない」の文言に関わり、登記は第三者に対して自己の物権を主張するための対抗要件とされています。

第三者とは

判例では「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者」としています。登記の欠缺(けんけつ)とは、つまり登記を欠いていることです。

その者が第三者に該当すると登記がなければ対抗できませんが、第三者に該当しなければ登記がなくても対抗することできます。

 

第三者に該当する者

①二重譲渡の最初の譲受人と次の譲受人

②遺産分割をした後に現れた第三者

③仮差押債権者

④不動産の賃借人

あと少しだけ追記するので、お待ちください。

 

第三者に該当しない者

①当事者及びその包括承継人

②背信的悪意者

③無権利の者

不動産登記法5条に該当する者

⑤道路が要役地として使用されていることについて、悪意か有過失であった承役地の譲受人

 

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取消と登記の物権変動

取消と登記の関係では、詐欺の場合を考えていきましょう。AがBに騙されて土地を売却しBに登記を移転しており、詐欺を理由に契約を取り消してAが登記を回復する前にBが第三者Cに土地を売り渡した場合を考えます(契約取消後の第三者)

この場合、AとCは対抗関係になるため、どちらに登記があるかで物権の帰結が決まります。Aが登記を備えればAの勝利、Cが登記を備えればCの勝利ということです。

解除と登記

解除と登記の関係では、AがBに登記を移転したがその契約を解除した後、BがCに転得していた場合には、契約解除後の第三者とみなされ登記の有無によって法律関係が決まります。Aに登記があればAの勝利、Cに登記があればCの勝利ということです。

取得時効と登記

取得時効の登記の関係は2つのケースに分けられます。

 

ケース1 時効完成前

時効を完成してその時効を援用する際に、時効を完成したときの所有者が占有を開始したときと同じ、または時効完成前に別の人に所有権が移転されていた場合には、時効援用者は登記なしに第三者に対抗することができます、

 

ケース2 時効完成後

時効完成後に時効を援用しようとしたところ、占有開始時の所有者が第3者に所有権を移転していた場合、時効援用者は登記なしに第3者に対抗することができません。

このように、第3者が取得時効完成前に現れたのか、それとも取得時効完成後に現れたのかによって登記が不要なのか必要なのかが決定します。 

 

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相続と登記による物権変動

①共同相続と登記

共同相続人の一人が単独で相続の登記を行い、その相続分について第三者に譲渡した場合であっても、他の共同相続人は登記なくして第三者の対抗することができます。

共同相続人であっても自分以外の相続分については無権利であり、登記に公信力がないことから、譲受人は譲渡人以外の相続人分の権利を取得することができない(最高裁判決昭和28年2月22日

 

②相続放棄と登記

AとBが共同相続をすることになっていたが、Aが相続放棄をして登記をしないうちに、Aの債権者がAの持ち分に関して差し押さえていた場合を考えます。

この場合、Bは登記がなくても債権者に対しては、Aが相続放棄をしたのだから単独相続だと主張することが可能です(最高裁判決昭和42年1月20日

これは、民法939条によって、相続放棄をした者ははじめから相続人ではなかったものとみなされるため、Aの相続分も消滅することから導かれます。

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす

民法939条』  

 
③遺産分割と登記

不動産をAとBが共同相続をして、両者の協議によってBの単独相続となっており、Bが登記をしないうちにAの債権者が持ち分について差し押さえをした場合を考えます。

この場合、相続放棄とは違ってBは登記なしに債権者に単独相続を主張することができません。

民法909条の但し書きで第三者の権利を害さないことが規定されていたり、遺産分割の変更は最初の取得した共同相続分を変更し新たな権利関係を設けると解されるため、177条の対抗関係として処理されるべきだとされています(最高裁判決昭和46年1月26日

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

民法909条

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特定遺贈後の第三者と登記の関係

被相続人から特定遺贈を受けたAが登記をしないでいるうちに、他の相続人Bの債権者がその遺贈物を差し押さえた場合を考えます。この場合、Aは登記なしではBの債権者に対抗することができず、登記の有無で物権変動の優劣が決まります(最高裁昭和46年11月16日)。

賃貸借における登記の関係

①明け渡し請求の登記

A所有の不動産をBは賃借していたが、Cがその不動産を譲り受けBに対して明け渡し請求をした。このケースでは、BがCへの対抗要件を備えていなくても明け渡しをする必要はなく、逆にCは明け渡しを要求するのに登記が必要とするのが判例の立場である。

 

②Bに対する賃料請求と登記

Bに賃借権があって不動産の賃借を継続する場合に、Cは登記なくして不動産の賃料を請求できるのか。このケースでも、賃料請求をする場合にCは登記を必要とするのが判例の立場である。

    

登記制度に関連して

①登記の流用

登記の流用とは、最初に設定されていた登記が無効・または実体性を欠いてきた後に、この登記に類似した関係が発生してきたため、最初の無効になっていた登記を新たに発生している類似した関係に適用することをいいます。

最初の登記をそのまま使っていくということですね。これについて、判例では新築物件への登記の流用は無効、抵当権登記流用は流用前の第三者なら無効、流用後なら有効としています。

 

②中間省略登記

中間省略登記とは、A→B→Cに物権変動が起こっているのにも関わらず、AからCへとBを省略して登記移転を行う方法をいいます。

判例では、上記場合でBの同意なく中間省略登記がおこ行われても、Bに中間省略登記の抹消登記を求めるのに正当な利益がなければ、抹消登記請求はなされないとしています(最高裁判決昭和35年4月21日

 

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