【朝日訴訟】生存権の性質 最高裁昭和42年5月24日判決
みなさん、こんにちは!
今日は、朝日訴訟を解説していきます。
最高裁判決全文はこちらになります。
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事件
上告人は生活保護法に基づく医療扶助生活扶助を受けていました。
しかし、兄から仕送りをしてもらうことが分かると、社会福祉事務局長は毎月の生活補助を打ち切って、仕送りの金額から日用品費を控除した医療費の一部を上告人に負担させることにしました。
上告人は不服申し立てをするも却下されたため、不服申し立ての採決の取り消しを求める訴訟を提起しました。
争点
- 生存権の性質
- 補助受給権が相続の対象となるか
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
判決
想像の対象となるかについて
保護受給権は
- 「被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一審専属の権利であって、他にこれを譲渡し得ない」
- 「相続の対象ともなり得ない」
このように述べたうえで、「当該保護者の死亡によって当然消滅し、相続の対象となり得ない、と解するのが相当」としました。
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念のため判決
「念のために」として、生活扶助基準の適否に関する裁判所の意見を述べています。
憲法25条1項について
本条の規定は「すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどま」るとします。
そして、これは「直接個々の国民に対して具体的権利を付与したものでは」ありません。
健康で文化的な最低限度の生活というのは、「抽象的な相対的概念であり、その具体的内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴って向上するのはもとより、多数の不確定的要素を総合考慮してはじめて決定でき」ます。
そのため、「何が健康的で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的な裁量に委されて」います。
そして「その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生じることは」ありません。
補足
本件判例は一般的に「プログラム規定説」を採用したものと考えられていますが、裁量権の乱用があれば違法な行為として司法審査の対象になるとしている点で、プログラム規定説とは異なる部分があります。
憲法の特定の人権規定に関して、形式的に人権として法文においては規定されていても、実質的には国の努力目標や政策的方針を規定したにとどまり、直接個々の国民に対して法的権利を賦与したものではないとする考え方。
練習問題
合っていれば〇、間違っていれば✖で答えよ。
ウ.いわゆる朝日訴訟においては,生活保護法に基づく生活扶助を廃止するとともに医療扶助を変更する旨の保護変更決定について,これを認容した厚生大臣の裁決自体の裁量権の逸脱・濫用が争われたのではなく,生活保護法自体が憲法第25条第1項に違反するとして争われた。[№15](司法試験 H27 第七問 ウ)
解答:✖
生存権については以下の判例もご覧ください。
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