司法試験憲法短答試験過去問解説H29第10問 【生存権】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験憲法過去問第10問を解説します。
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〔第10問〕(配点:2)
生存権とこれを具体化した法制度に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[№21])ア.国民年金制度は,憲法第25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障上の制度であるから,同条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量にゆだねられており,著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱,濫用とみざるを得ないような場合を除いて,裁判所が審査判断するに適しない事柄であり,何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いがあっても,憲法第14条違反の問題は生じ得ない。
イ.憲法第25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は,きわめて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから,国の立法として具体化される場合にも,国の財政事情は考慮されるべきではない。
ウ.国は,難民条約の批准及びこれに伴う国会審議等を契機に,外国人に対する生活保護について一定の範囲で国際法及び国内公法上の義務を負うことを認めるに至ったものであり,少なくとも永住外国人にも憲法第25条第1項の保障が及ぶものとなったと解すべきであるから,生活保護法の適用対象となる「国民」には永住外国人も含まれる。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×
3.ア○ イ× ウ○ 4.ア○ イ× ウ×
5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
アについて
アは、年金の併給禁止規定が問題となった堀木訴訟の判決文になります。
憲法25条が抽象的な条文であることから、それを立法などで具体的な内容を定めて実現するのは国会の役割になります。
そのため、立法措置の選択は国会の裁量にあり、著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱、濫用とみなされるような場合を除き、裁判所の司法審査の対象にはなじまないとしています。
ただ、もしその立法措置に関して、合理的理由のない差別があるのにそれを放置しておくことは、多くの国民が不利益を被ることになりかねず、憲法14条違反の問題が生じると考えられます。
よって、問題の最後の方が間違っているため答えは「×」となります。
イについて
イの問題も、堀木訴訟の判決文が重要になります。
憲法25条の要請を実現するのは国会の役割であるため、その時々の状況に応じて柔軟に対応することが求められます。
そのため、国の財政事情を考慮しないと、行き過ぎた政策またはまったく保障が行き届かない政策になりかねないため、堀木訴訟では「国の財政事情を考慮すべき」と判示しています。
よって、最後の部分が間違いであるため答えは「×」となります。
③ウについて
旧優生保護法では、国民に外国人が含まれるか明確には示されていませんでしたが、現行生活保護法では、法の適用対象が「国民」と明確に定められている。
また、「国民」に外国人が含まれるとしても、生活保護法の改正なしに外国人には適用されず、難民条約に加入しただけで国民に外国人が含まれるとする通知が有効にはならないとした。
よって、答えは「×」となります。
ア=イ=ウ=×ということで、答えは「8」となります。
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