憲法判例【永住外国人生活保護訴訟】憲法25条生存権の関係

みなさん、こんにちは!

今日は、永住外国人生活保護訴訟を解説していきます。

判決文が見当たらなかったため、萩上チキ様のサイトにある最高裁判決文を参考にさせていただいております。

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争点

永住外国人の方は生活保護を申請したが却下されたため、それが憲法25条の規定に違反するか。

原審判決

被上告人の状況

永住資格を有する永住外国人であって、生活保護を受給しないと生活が困難な状況にあった。

外国人に対する生活保護措置

・旧生活保護法では、外国

人に対しても生活保護が及ぶ趣旨と解すことができる

・現生活保護法では、25条の条文に応えて2条では、生活保護法1条に該当する者は保護を「無差別平等に受けることができる」としている

・旧来では、外国人には日本国民と同じように生活保護が及ぶものとされていたが、平成2年の行政庁の通知で「永住外国人のみ」に限るとしていた

難民条約との関係

難民条約に加入したものの、23条では「締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、公的扶助及び公的援助関し、自国民に与える待遇と同一の待遇を与えると規定されていました。

この規定により、生活保護を「国民に限る」としていた部分に誤りが生じることになったため、国民年金・児童扶養手当法等は見直されたが生活保護法だけは見直されなかった。

ただ、国会審議では、生活保護制度以来、自国民と同様の水準で外国人を取り扱っているため、国籍要件を取り除かなくても同じだという解釈があったため、特に問題にはされていませんでした。

これら難民条約や国会審議によって外国人の地位は「法的に保護された」ということができ、永住外国人・一定の範囲の外国人は生活保護の対象とすべきで、被上告人もそれに当たるとした。

 

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最高裁判決

ただ、最高裁は上記の被上告人が生活保護の受給対象に当たり、生活保護の申請を却下したのは違法とした原審判決を全面的に否定する立場に立っている。

理由①

旧生活保護法では国民の範囲が定められていなかったが、現行生活保護法では法の適用対象が「国民」と明確に定められており、ここには外国人が含まれないと思われる。

さらに、その後の法整備等でも「国民」を外国人に解すことができるとしたものはなく、ここからも生活保護の適用対象が「国民」に限定されると理解できる。

理由②

たとえ「国民」を永住外国人に解すとする通知があったとしても、生活保護法の改正なしに外国人にも適用されるのは適切ではなく、難民条約の加入で上記通知が有効になるとはいえない。

上記①②の理由から、外国人は行政庁の通知等で「事実上の保護の対象」になるだけで、法の保護対象にはならず生活保護の受給権もないとした。

そのため、生活保護の申請を却下したことは、この理解に基づくものであるから適切としました。

永住外国人にも生活保護の対象は認められないという判例でしたが、このほかに不法在留者の判例があります。当然ながら、不法在留者にも認められないと判決を下しているので、併せて覚えておきましょう。

 

生存権についてはこちらの判例もご覧ください

www.eityan-houritu.site

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司法試験でも出題されています。

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