憲法判例【堀越事件判決】公務員の政治的活動の関係

みなさん、こんにちは!

今日は、堀越事件判決を解説します。

全文は『http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/801/082801_hanrei.pdf

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争点

公務員に政治的行為の自由が認められるか。

判決①は憲法21条31条に違反するかが争点。

判決②は配布行為について人事院規則に規定される、政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるか。

堀越氏は厚生労働事務官でしたが、共産党を支持する目的をもって機関誌の新聞赤旗等を配布していたため、国公法違反で起訴されました。

本判決は、公務員に政治的行為の自由が認められなかった猿払事件の判例を変更せずに、新たに判決を下した点に意義があります。

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判決①

政治的行為について

公務員は国民の一部ではなく全体に奉仕することが憲法15条で定められる。

また、その中で「国の行政機関における公務」というのは、国民全体に対する奉仕として中立性が求められる。

これを実現するには公務員の職務に政治的中立性が求められ、それを実現することで国民に奉仕し信頼を得ることを目的としたのが、国公法102条1項。

表現の自由

これに対し、憲法21条から政治的行為の自由が保障されており、公務員への制限は「必要やむを得ない限度に限定されるべき」である。

まとめると、国公法102条1項にいう政治的公とは「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるもの」である。

また、「本規則6項7号,13号(5項3号)については,それぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを当該各号の禁止の対象となる政治的行為と規定したものと解するのが相当」としています。

罰則規定が憲法21条31条違反か

人事院規則の罰則規定の目的は、公務員の職務に政治的中立性を確保することで、国民の信頼を維持し国民全体の利益を保護するためのものである。

そのため、規制の目的は合理的と言える。

また、罰則規定で禁止されるのは、一般的な表現の自由による政治的行為の自由ではなく、公務員として中立性を損なうような政治的行為を意味していることは明らか。

それ以外の行為は禁止されるべきではなく、必要やむを得ない限度にとどまり、国民の利益などのために合理的な範囲内ということができる

こうした事実をみてみると、不明確でもなく過度に広汎であるということができないことは明らかです。

また、懲戒処分以外にも刑罰が予定されることは、公務員の行為に懲戒処分では対応できない場合も想定され、「あり得べき対応というべきであって,刑罰を含む規制であることをもって直ちに必要かつ合理的なものであることが否定されるものではない」としています。

こうしたことから、人事院規則の罰則規定は憲法21条31条に違反していないとされた。

 

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判決②

被告人は、管理職の地位にはなく、来庁した者に対して決められた手続きを行うことが要請されており、裁量の余地はなかった。

さらに、本件配布行為は、休日に国・職場の施設を利用せず行われ公務員としての立場を利用しなかったことに加え、無言で機関誌を投函しており公務員と認識する余地はなかった。

以上の事情から、被告人は管理職の地位になく、職務に権限の余地のない公務員によって職務とは関係なく、公務員の性格がなく行われたものです。

そのため、公務員の行為に政治的中立性を損なうものがあったとは認められないとし、本件の配布行為は、本件罰則規定の構成要件に該当しないとした。

猿払事件の判例違反について

猿払事件は、「労働組合協議会の決定に従って行われたもので、(中略)その構成員である職員団体の活動の一環として行われ,公務員により組織される団体の活動としての性格を有するもの」とした。

そのことから、公務員の政治的中立性を損なう行為であったことは明らかであり、「事案を異にする判例を引用」しているとした。

以上のように、人事院の罰則規定は憲法21条・31条に違反せず、公務員の配布行為が人事院の罰則規定に該当しないとした判例でした。

 

公務員の政治活動の自由についてはこちらの判例もご覧ください。

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