司法試験過去問解説平成28年憲法短答式試験第11問

みなさん、こんにちは!

今日は司法試験憲法H28の第11問を解説していきます。

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〔第11問〕(配点:3)
憲法の規範内容が踏みにじられたり不当に変質させられたりしないようにする様々な国法上の工夫は,広く「憲法の保障」と言われるが,その代表的な方法や考え方に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№21]から[№23])
ア.国家緊急権は,外敵の侵入,内乱や大規模な災害などにより国家の存立が脅かされる事態に至った場合に執り得る非常措置権とされるが,平常時における立憲主義の一時停止を認める権限であるから,憲法の明文で国家緊急権を容認している例は諸外国にもない。[№21]

イ.抵抗権は,政府による権力の濫用によって立憲主義秩序が破壊された場合に国民がそれに反抗する権利とされるが,実力の行使を伴う危険なものであるから,権利として実定法化することは不可能である。[№22]
ウ.憲法の連続性を維持するための特別な手続を定める憲法改正規定や憲法の最高法規性を確保するために特別な合憲性統制の途を設ける違憲審査制は,ともに憲法の保障の一つの方法として位置付けられる。[№23]

問題『法務省:平成28年司法試験の実施について

解答『法務省:平成28年司法試験短答式試験結果

アについて

国家緊急権というのは非常時に憲法の一部を停止して、その事態に対処しようとする権能となります。

立憲主義体制を停止するのが通常とされていて、ドイツやフランスなど諸外国の憲法にもこの規定は見られます。

よって解答は2となります。

イについて

憲法に抵抗権が明確に定められているわけではありませんが

日本国憲法は自然法思想による基本的人権をその本質的構造部分としているのであるから抵抗権を内在せしめているといってよい

出典『札幌地判昭和37年1月18日』

このように裁判で判示されています。

当然ながら、革命などの危険性を内在している抵抗権の行使には、厳しい制限が付されないといけないとします。

ただ、

憲法法律等により定められた一切の法的救済手段がもはや有効に目的を達する見込がなく、法秩序の再建のための最後の手段として抵抗のみが残されていることが必要であると云わねばならぬ

出典『札幌地判昭和37年1月18日』

以上のように述べていることから分かるように、明文化されてはいませんが基本的人権の中に抵抗権が含まれると解するのが相当です。

よって解答は2となります。

ウについて 

ここで一度「憲法の保障」について確認しておきましょう。

国家権力による憲法を侵害する行為や憲法に違反する行為から憲法を守り、憲法による秩序を存続させ、安定させること。または、その手段のこと。

出典『憲法保障 - Wikipedia

これに憲法改正規定や違憲審査制を合わせてみましょう。

侵害する行為から憲法を守る手段・秩序を存続させるために憲法改正規定は有効なものとなり、侵害する行為から守る手段として違憲審査制は有効なものとなります。

よって、憲法改正規定と違憲審査制は憲法の保障にあるということができるので、解答は1となります。

 

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