司法試験憲法短答式試験過去問解説H30第5問

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験憲法第5問を解説します。
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問題

〔第5問〕(配点:3)
次の見解は,インターネット上の名誉毀損罪の成否と表現の自由について論じたものである。この見解に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[№9]から[№12])

「インターネットの利用者は,自己の見解を外部に向かって発信することができるから,インターネットを利用している被害者は,自己に向けられた加害者のインターネット上の表現行為に対し,言論による反論が可能である。したがって,インターネットの利用者が名誉毀損の表現行為をした場合には,新聞などのマス・メディアを通じた表現の場合よりも,名誉毀損罪の成立する範囲を限定すべきである。」

ア.この見解に対しては,インターネット上の全ての情報を知ることは不可能であり,自己の名誉を毀損する表現が存在することを知らない被害者に対して反論を要求すること自体,そもそも不可能である,という批判があり得る。[№9]

イ.言論の応酬により当不当を判断することができるのは意見や論評であって,事実の摘示による名誉毀損の場合には,被害者と加害者が言論の応酬をしても,インターネット利用者は真偽を判断することができないという指摘は,この見解の根拠となり得る。[№10]

ウ.この見解に対しては,インターネット上に載せた情報は,不特定多数の利用者が瞬時に閲覧可能となり,全世界に伝播される可能性もあることから,被害者のインターネット上の反論によって名誉の回復が図られる保証もない,という批判があり得る。[№11]

エ.言論による侵害に対しては,言論で対抗するのが表現の自由の基本原則であり,被害者が加害者に対し十分な反論ができ,功を奏するのであれば,被害者の社会的評価が害されるおそれはないという指摘は,この見解の根拠となり得る。[№12]

http://www.moj.go.jp/content/001258873.pdf

 解説

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①アについて

インターネットの情報は膨大ですから、すべての情報を知ることは不可能です。

そのため、自己に向けられたすべての情報を知ることも不可能で、それを知らない被害者に対して反論を要求することが不可能であるといえます。

よって、答えは「1」となります。

②イについて

言論の応酬で当不当を判断することができるのには、意見・諭評はもちろん含まれます。

事実の適示による名誉棄損で被害者と加害者が応酬をした場合、被害者は名誉棄損を受けていますから、それに対して応酬すれば、インターネット利用者は真偽を判断することが可能です。

なぜなら、名誉棄損に対して反論することで、ネット利用者は「被害者の情報が正しいのか」と判断できる場合もあるからです。よって、イの答えは「2」となります。

③ウについて

名誉棄損となる情報が世界に伝播されてしまっては、不特定多数に対して反論しないと名誉の回復が図られないことになります。よって、答えは「1」。

④エについて

判例では、言論に対して言論で対抗するのは、一つの解決手段として認められています。自己に向けられた批判に対し名誉棄損があるのであれば、それに反論することで社会的な評価が害されることはないでしょう。

そのため、答えは「1」となります。

 

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