司法試験問題解説H30第一問 【公務員の政治的行為の制限について】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験H30の第一問を解説していきます。
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問題
〔第1問〕(配点:3)
次の対話は,公務員の人権に関する教授と学生の対話である。教授の各質問に対する次のアからウまでの学生の各回答について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№1]から[№3])
教授.公務員の地位のように権利主体と公権力との間に特殊な法律関係がある場合には,憲法の人権保障が原則として及ばないなどとする理論がありますね。このような理論によって公務員の人権に対する制約を正当化した最高裁判所の判決がありますか。
ア. はい。猿払事件判決(最高裁判所昭和49年11月6日大法廷判決,刑集28巻9号393頁)が,先生のおっしゃる趣旨の判示をして,公務員の政治的意見表明の自由に対する制約を正当化しています。[№1]
教授.あなたの言うその判決は,国家公務員法第102条第1項が一定の行動類型に属する政治的行為を禁止していることに伴い生じ得る意見表明の自由の制約については,どのような判示をしていますか。
イ. 公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を禁止することに伴い意見表明の自由が制約されることになっても,そのような制約は行動の禁止に伴う限度での間接的・付随的制約にとどまると判示しています。[№2]
教授.堀越事件判決(最高裁判所平成24年12月7日第二小法廷判決,刑集66巻12号1337頁)は,公務員のしたある行為が国家公務員法第102条第1項にいう「政治的行為」に該当するか否かの判断についてどのような枠組みを示していますか。
ウ. 同項にいう「政治的行為」の意義を,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものと解した上,その判断においては,当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当であると判示しています。[№3]
解説
第一問では、公務員の人権(政治的行為の自由に関する判例)が問われました。
全農林警職法事件・猿払事件判決・堀越事件判決の3つの判例の違いを押さえていると確実に解けたのではないかと思います。
全農林警職法事件
全農林警職法事件では、公務員の地位の特殊性・国民の利益の保護という観点から、公務員は一般私企業とはことなる制約にあり、それは国際的に見ても妥当するものとしました。
猿払事件判決
猿払事件では、意見表明の自由が制約されて意見表明ができなくなるとしても、それは政治的行為を禁止することによる間接的・付随的な制約に過ぎないとしました。
また、それは国公法で定める行動以外の行為による意見表明を禁止するものではないともしました。
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堀越事件判決
堀越事件判決では、管理職の地位にない公務員が行った配布行為は、職務の内容や行ったから公務員として行ったものではなく、政治的な中立性を損なわないとされました。
そのため、猿払事件の判例を変更せず、公務員の行った政治的行為が人事院規則の「政治的行為」に該当しないとされた判例です。
①アについて
いわゆる特別権力関係ついての判例のことを言っていますが、その判決をしたのは全農林警職法事件であって、猿払事件ではないため答えは「2」となります。
②イについて
イは猿払事件の判決通りで、意見表明の自由が制約されても、その禁止の限度の間接的・付随的な制約であるとしているので、イの答えは「1」となります。
③ウについて
ウは堀越事件判決についてですが、判旨では公務員の職務の内容・地位その他公務員のした行為目的など、様々なことを考慮したうえで政治的行為に当たらないと判断されました。
よって、多くの事情を考慮して判断すべきであったため、ウは「1」となります。
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