司法試験憲法短答式試験過去問解説H30第四問【信教の自由】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験憲法第四問を解説します。

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問題

〔第4問〕(配点:3)
信教の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№6]から[№8])

 

ア.輸血以外に救命手段がない場合には輸血を拒否するという意思決定を尊重すべきとはいえないので,患者が,輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして,輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有していたとしても,このような意思決定をする権利は,人格権としての保護に値しない。[№6]

イ.信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対して学校長が行った原級留置処分及び退学処分は,履修拒否が生徒の信仰の核心部分と密接に関連する真しな理由からのものであり,代替措置の申入れに対して学校側はそれが不可能でないのに何ら検討することなく拒否したなどという事情の下では,裁量権の範囲を超えて違法である。[№7]

ウ.宗教法人に対する解散命令のような法的規制は,たとえ信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても,これに何らかの支障を生じさせることがあり得ることから,信教の自由の重要性に鑑み,憲法上,そのような規制が許容されるものであるかどうかは慎重に吟味しなければならない。[№8]

http://www.moj.go.jp/content/001258873.pdf

 解説

エホバの証人輸血拒否事件

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エホバの証人輸血拒否事件では、輸血は自己の信教に反しているため拒否すると意思表示していたのに対し、医師が何の説明もなく輸血を行ったことが、信者の人格権を侵害するとされました。

そのため、医師が患者の生命・健康を管理するのは重要ですが、患者の人格権が優先され判例となります。

 

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剣道実技拒否事件

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剣道実技拒否事件は、信教上の理由で剣道実技を拒否したのに対し、学校側が適切な行動をとらず、さらに退学処分としたことは、裁量の逸脱だと判決されました。

他に、何かしらの代替措置が可能であったはずなのに、それらを考慮・実行することなく退学処分をしたことは違法ということ。

宗教法人オウム真理教解散命令事件

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この事件では、宗教法人オウム真理教に対する解散命令が、信教の自由を制約するものでないかが問われました。

ただ、解散命令は事実上のものであり間接的な制約にすぎないとされ、なんら違法なものではないと判決が下されましたが、宗教上の活動になんらかの支障をきたすため、慎重性が求められるとしています。 

 

①アについて

アは、エホバの証人輸血拒否事件のことであり、判示されているように、意思決定をする権利は人格権の一内容として保護されています。

よって、答えは「2」となります。

②イについて

 イは、剣道実技拒否事件のことであり、学校側は代替措置に関して何ら考慮することなく、退学処分を下しておりその判断が最良の逸脱とされていました

よって、答えは「1」となります。

③ウについて

ウは、オウム真理教解散命令事件のことで、解散命令は事実上のもので間接的なものであるとしています。

しかし、解散命令によって宗教団体が法人として存続しなくなるため、信者らの宗教活動に影響が出ることは明らかです。そのため、その規制は慎重である必要があるとしました。

よって、答えは「1」となります。

 

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