司法試験憲法短答式試験過去問解説H30第17問【司法審査が及ぶ範囲】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験憲法第17問を解説します。

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問題

〔第17問〕(配点:2)
司法審査が団体の内部事項に関する行為に及ぶかに関する次の学生アからエまでの各発言について,正しいものの組合せを,後記1から6までの中から選びなさい。(解答欄は,[№39])

ア.「自律的な団体の内部紛争に対して司法審査が及ぶかという問題に関して,地方議会には,国会の両議院のような自律権はないものの,地方議会議員に対する懲罰としての除名処分は,内部規律の問題であるから,司法審査の対象とはならないとした判例があるよ。」

イ.「判例の考え方からすると,発声障害により自ら発声することができない地方議会議員が,第三者による代読等,自らの発声以外の方法による発言を希望したのに対し,これを認めないという地方議会の決定は,純然たる内部規律の問題であるから,司法審査の対象にはならない
ことになるね。」

ウ.「大学の単位認定行為は,特段の事情のない限り,純然たる大学内部の問題であって,大学の自主的な判断に委ねられるべきだから,司法審査の対象とならないとした判例もあったな。」

エ.「判例の考え方からすると,特定の授業科目の単位の取得が国家資格取得の前提要件とされている場合には,大学の単位認定行為が司法審査の対象になる可能性もあるね。」
1.ア イ 2.ア ウ 3.ア エ

4.イ ウ 5.イ エ 6.ウ エ

http://www.moj.go.jp/content/001258873.pdf

 解説

昭和35年3月9日判決

この判決では、議員の除名処分というのは、「議員の身分の喪失に関わる重大事項」である(村議会議員懲罰事件より抜粋)ことから、司法審査の対象が及ぶとされました。

ただ、当該議員が任期満了で議員の身分を喪失しており、議員に復帰するという実益がないことから、請求は棄却されました。

 

村議会議員懲罰事件

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村議会議員懲罰事件では、議案の採決に反対していた者と賛成派の内部紛争があり、反対派の議員を懲罰したことに司法審査が及ばないとされました。

これは、村議会が自律的な法規範を持つ社会・団体であることから、内部規律の問題としてその社会・団体の自治的措置に任せて、裁判所が審査するものではないとしました。 

 

富山大学単位不認定事件

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富山大学単位不認定事件では、単位を不認定とされても一般市民として害される権利がないため、司法審査の対象にならないとしました。

また、単位取得が「現行法上又は社会生活上」の一種の資格要件であるから司法審査の対象となるという主張がありました。

そこで、特定の授業科目の単位の取得それ自体が一般市民法上一種の資格要件とされる場合もあり、単位認定が一般市民法秩序と関係を持つことは否定できない。

ただ、それは限られた場合だけで、一部にその関係があるからといって、すべての科目の単位取得が一般市民法上の資格地位に関係し、単位認定が一般市民法秩序と関係を持つとは言えないとしました。

 

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①アについて

アは、昭和35年3月9日判決をもとにした問題だと思われます。

この判決では、除名処分というのは議員身分の喪失に関わることであるという理由から、司法審査の対象になりうるとしているので、答えは「×」となります。

 

②イについて

 

③ウについて

ウは、富山大学単位不認定事件のことで、判決の通り、特段の事情がなければ単位不認定は大学内部の問題であり、司法審査の対象にならないと判決されたので、答えは「〇」となります。

④エについて

エも富山大学単位不認定事件のことです。

判決でも、特定の科目の単位取得が一般市民法上の資格地位を持ち、その場合は、一般市民法秩序と関係を持つことは否定できないとしています。

そのため、特定の授業の単位取得が国家資格という一般市民法上の資格地位を持っていれば、司法審査の対象になる可能性があります。

よって、答えは「〇」となります。

ウとエが「〇」なので、「答えは「6」となります。

 

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