司法試験憲法短答試験過去問解説H29第7問 【取材の自由】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験憲法過去問第7問を解説します。

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〔第7問〕(配点:2)
取材の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№18])

ア.報道機関の取材結果に対する裁判所による提出命令の可否の判断に当たっては,個別事情を考慮することなく,公正な刑事裁判の一般的価値とこれと対立する取材の自由・報道の自由の一般的価値とを比較衡量して判断するという手法によるのが相当である。

イ.適正迅速な捜査は公正な刑事裁判の不可欠の前提であることから,取材の自由に対する制約の許否に関しては捜査と公判とで本質的な差異はなく,したがって,差押えの主体にかかわらず,報道機関の取材結果に対する差押えの可否を判断する際の基本的な考え方は変わらない。

ウ.民事訴訟における,報道関係者による取材源に係る証言拒絶は,当該報道が公共の利益に関わり,取材方法が適切であり,取材源が秘密の開示を承諾していない場合には,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であっても,原則として許容される。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×

3.ア○ イ× ウ○ 4.ア○ イ× ウ×

5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

http://www.moj.go.jp/content/001224568.pdf問題

http://www.moj.go.jp/content/001224568.pdf解答

アについて

アは、博多駅テレビフィルム提出命令事件の問題になります。

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この判例では、フィルムは裁判の重要な証拠であり、迅速な裁判を実現するために必要とされれば憲法21条の取材の自由もある程度の制約を受けるとします。

ただ、この際にも、提出命令によって報道機関の被る不利益などを総合的に考慮しなければならないとします。

これを含めその他の事情を考慮したうえで、提出命令が憲法21条に違反しないとしました。

これを踏まえてみていくとアでは、提出命令の可否に当たって、個別事情を考慮しなくていいのかが問題とされています。

この点、最高裁は、公正な裁判の実現のために必要であることと、フィルムの提出によって報道の自由・取材の自由に及ぼすであろう影響・その他の事情とを比較考量すべきとしています。

個別具体的な事情を考慮しないと、判断する際に相手方にとっては不利な状態になりますから、考慮するのは当然と言えるでしょう。よって、アの答えは「×」となります。

イについて

イは、これまでの取材の自由に関する判決である、日本テレビ事件・TBSビデオテープ差押え事件の2つを総合した問題です。

日本テレビ事件では公判による差押え、TBSビデオテープ事件では捜査機関による差押えがされました。どちらの判決でも、取材の自由に対しての制約に対する認識には基本的な差異がありません。

そのため、差押えの主体が公判でも捜査機関でも取材の自由に対する認識に差異はないため、イの答えは「〇」となります。

ウについて 『裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

ウでは、民事事件で証言拒絶権が認められるかが争点となっています。この点、下級裁判所の判例例として「島田記者事件」、最高裁判例として「米健康食品会社脱税報道事件」があります。

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島田記者事件・米健康食品会社脱税報道事件ともに証言拒絶権が認められましたが、米健康食品会社脱税報道事件では、証言拒絶権を認めることができる例が示されました。

公共の利害に関係するもので、その事件が社会的に影響のある重大な事件で、社会的価値を考慮してもなお公正迅速な裁判を実現するための必要性が高く、その記者の証言を得なければならないなどの事情がなければ、原則として記者に証言拒絶権が認められるとしています。

よって、ウの問題は重要な民事事件でも証言拒絶権が認められるとしている部分が誤りだと分かり、答えは「×」となります。

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以上より、ア=ウ=×、イ=〇で答えは「6」となります。取材の自由は、今回で取り扱われた判例に加えて証言拒絶権が否定された「石井記者事件」があるため、合わせてみておくといいでしょう。

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