民法物権講座~昔からある永小作権?

みなさん、こんにちは!

今日は、永小作権を解説していきます。

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永小作権の内容

永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。『民法270条

解説

永小作権というのは、永小作人が小作料を支払うことで、他人の土地を耕したり牧畜をすることができるようになる権利のことです。これは昔から、他人の土地を耕作してそこから得たものを地主とか領主に納める体制があったのは、よく知られているところでしょう。

永小作人による土地の変更の制限

永小作人は、土地に対して、回復することのできない損害を生ずべき変更を加えることができない。『民法271条

解説

永小作人は小作料を払って他人の土地を使用していて、それは期限がきたら返還しないといけないわけですから、その土地に回復できないような損害を生じさせてしまうような土地の変更を加えてしまうことは禁止されています。

永小作権の譲渡又は土地の賃貸

永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又はその権利の存続期間内において耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。ただし、設定行為で禁じたときは、この限りでない。『民法272条

解説

永小作人は土地を借りている者ですが、さらに永小作権が存続している間は耕作や牧畜のために土地を別の者に賃貸することができます。マンションとかでいう「転貸」も、永小作権には認められていますが、特約で禁止された場合は転貸不可能となります。

 

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賃貸借に関する規定の準用

永小作人の義務については、この章の規定及び設定行為で定めるもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。『民法273条

解説

永小作人の義務については性質に反しない限り、賃貸借の規定にある賃借人の規定を準用することとしました。土地を借りている・貸しているの関係が成り立っているため、賃貸借に規定が準用されました。

小作料の減免

永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。『民法274条

解説

永小作人は、災害などの不可抗力によって収益などに損失が受けたとしても、小作料の免除・減額は請求できません。昔でも、凶作の時に年貢が減免されなかったのと同じ規定が、現在の永小作人の規定に用いられているといっていいでしょう。

永小作権の放棄

永小作人は、不可抗力によって、引き続き三年以上全く収益を得ず、又は五年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。『民法275条

解説

さきほどの永小作人は不可抗力で小作料の免除・減額は請求できませんでしたが、それが3年以上収益なしか5年以上小作料より少ない収益であれば、永小作人を保護するために永小作権を放棄できるとしました。 

何年も収益が得られていないのに、小作料を納めろというのは永小作人にとって酷であるので、このような規定が設けられています。

永小作権の消滅請求

永小作人が引き続き二年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。『民法276条

解説

永小作人が2年以上小作料の支払いを怠っていた場合には、土地の所有者を保護するために、土地の所有者から永小作権の消滅を請求することができました。さきほどの永小作人の保護とは逆に、収入を得られない所有者の保護になります。

 

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永小作権に関する慣習

第271条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。『民法277条

解説

永小作権は昔からあるようなものですから、地域によってある慣習が根付いている場合もあります。そのため、慣習がある場合には民法を適用せず、その慣習に従わせることとしました。

永小作権の存続期間

永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする。設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。

永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から50年を超えることができない。

設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、30年とする。

民法278条

解説

永小作権というのは、20年から50年の期間に定められそれより長くても50年の期間になります。また、永小作権を更新することができても、更新のときから50年を超えることはできません。期間の定めがなければ永小作権は30年の期間となります。

工作物等の収去等

第269条の規定は、永小作権について準用する。『民法279条

解説

永小作権のよって得た永小作地の工作物の収去は、地上権同様の規定が設けられており、永小作権の消滅で永小作人が退去する際に、工作物の収去をして土地を元の状態に回復する必要がります。

しかし、その工作物があることで土地の価値が上がっており、それを維持するために土地の所有者がそれを買い取ると永小作人に対して通知した場合、永小作人は相当な理由がなければ買取を拒むことはできません。

ただし、工作物収去の規定と異なる慣習があれば、その慣習に従うものとします。
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