司法試験平成29年民法短答式試験第28問【請負】

みなさん、こんにちは!

今日は【請負】を解説していきます。

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〔第28問〕(配点:2)

請負に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№28])

ア.請負人は,仕事の目的物の引渡しを要する場合には,これを引き渡した後でなければ,報酬を請求することができない。

イ.請負人が仕事の目的物を引き渡した場合において,その目的物に瑕疵があり,注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求したときは,注文者は,その賠償を受けるまでは報酬全額の支払を拒むことができる。

ウ.建築請負の目的物である建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合であっても,注文者は,請負人に対し,建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することはできない。

エ.請負人の担保責任の存続期間は,これを契約で伸長することができない。

オ.請負人が仕事を完成しない間は,注文者は,いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができるが,契約の目的である仕事の内容が可分である場合において,請負人が既に仕事の一部を完成させており,その完成部分が注文者にとって有益なものであるときは,未完成部分に限り,契約を解除することができる。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ

問題『http://www.moj.go.jp/content/001224569.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001225946.pdf

アについて

請負契約においては、目的物の引渡義務と報酬支払い義務とは同時履行の関係に立つため、解答は✖となります。

イについて

民法634条2項

注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。

民法533条

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

判例:最高裁判決平成9年2月14日

判例によれば、信義則に反する場合を除いて、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わないとされます。

瑕疵の修補とともに損害賠償を請求することができ(634条2項)、その場合に損害賠償請求権と報酬支払請求権とは同時履行の関係に立ちます(533条)。

以上より、賠償を受けるまでは報酬全額の支払いを拒めることになるので、解答は◯となります。

 

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ウについて

判例:最高裁判決平成14年9月24日

要旨では「 建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる」と述べられます。

要旨より、重大な瑕疵があって建て替える必要がある場合は、請負人に対して建物の建て替えに必要な費用相当額の賠償を請求できることが明らかです。

そのため、解答は✖となります。

エについて

民法638条1項

建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。

 民法639条

第637条及び前条第1項の期間は、第167条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる。

瑕疵担保の責任を負う期間は638条1項より5年となりますが、639条に基づいて期間を契約で伸長することも可能です。

そのため、解答は✖となります。

オについて

判例によれば、仕事の内容が可分でその一部がすでに完成しており、完成部分が注文者によって有益であれば、注文者は未完成部分に限って契約解除をすることができるとされます。

そのため、解答は◯となります。以上、ア=ウ=エ=✖・イ=オ=◯なので解答は4となります。

 

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