司法試験憲法短答試験過去問解説H29第8問 【憲法22条1項の解釈】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験憲法過去問第8問を解説します。
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〔第8問〕(配点:2)
憲法第22条第1項の解釈に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№19])ア.農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みを採用したことの合憲性は,当該仕組みが国民の主食である米の生産の確保と稲作を行う自作農の経営の保護を目的とすることから,必要最小限度の規制であるか否かによって判断される。
イ.憲法第22条第1項は職業選択の自由を保障しているが,いわゆる営業の自由は,財産権の行使という側面を併せ有することから,同項及び第29条第1項の規定によって根拠付けられる。ウ.職業の許可制は,狭義の職業の選択の自由そのものに制約を課す強力な制限であるため,社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置であっても,より緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ,合憲性を肯定し得ない。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×
3.ア○ イ× ウ○4.ア○ イ× ウ×
5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
アについて
上記の判例にあるように、農業災害補償法事件における当然加入制は「重要な公共の利益に資するもの」であり、その措置の採用は「公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置」としています。
つまり、本件では一貫して「公共の利益・福祉」の観点から判決が述べられており、必要最低限からという観点からは述べられていない。
よって解答は✖となる。
イについて
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
営業の自由は明記されていませんが、職業選択の自由によって保障されています。職業を自由に選択できるのに、営業できなかったら自由にしている意味がありませんよね。
29条によって保障されるという意見もありますが、一般的には22条によって保障されると考えるのが適切です。そのため解答は✖となります。
ウについて
判例は薬局距離制限訴訟となります。
最高裁判決では、合憲性を肯定するためには重要な公共の利益のために必要であり合理的な措置であることを必要とするとしています。
また、以下のようにも述べられています。
それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの
出典『http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/936/051936_hanrei.pdf』
職業選択の自由に制限をすることになるので、規制によっては目的を十分に達することができないと認められない場合にも合憲性を肯定し得るとしています。
そのため、解答は✖となります。以上、ア=イ=ウ=×なので解答は8となります。
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