司法書士試験H29午前の部第5問【錯誤】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士H29午前の部第5問を解説していきます。

 

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第5問

錯誤に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記( )から( )までのうち,どれか。

ア 相手方の詐欺によってした法律行為につき要素の錯誤があった場合には,詐欺の規定のほか,錯誤の規定の適用もあり,詐欺を理由とする取消権が時効により消滅した後でも,表意者は,当該法律行為の無効を主張することができる。

イ 売買の目的物に隠れた瑕疵があり,売主に瑕疵担保責任が認められる場合には,この点につき買主に要素の錯誤があったときでも,錯誤の規定の適用はない。

ウ 当事者が和解契約によって争いをやめることを約した場合には,その争いの目的である事項につき錯誤があったときでも,錯誤の規定の適用はない。

エ 養子縁組の意思表示については,錯誤の規定の適用があり,表意者に重過失があったときは,表意者は,自らその無効を主張することができない。

オ 家庭裁判所に対してされた相続の放棄の意思表示については,錯誤の規定の適用はない。

1 アウ 2 アエ 3 イエ

4 イオ 5 ウオ

出典

問題『司法書士試験H29問題

解答『司法書士試験H29解答

アについて

判例では詐欺・錯誤による無効の両方を主張することを認めているため解答は◯となります。

イについて

民法570条
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

判例:最高裁判決昭和33年6月14日

要旨では「契約の要素に錯誤があつて無効であるときは、民法第五七〇条の瑕疵担保の規定の適用は排除される」と述べられます。

契約要素の錯誤について95条が適用されることを示した判例となるので、解答は✖となります。

ウについて

民法696条
当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。

判例:最高裁判決昭和43年7月9日

判決では「争いの目的たる事項に該当するといえるから、この点について和解当事者は錯誤を理由としてその無効を主張しえない」とされます。 争いの時効に該当するものは錯誤無効を主張できないため、解答は◯となります。

エについて

民法802条1号
人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

縁組は802条1号2号に掲げられる事由によって無効となり、錯誤もその一つとなっています。そのため、解答は✖となります。

オについて

民法938条
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
民法95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

相続放棄は家庭裁判所に申述しなければならず、この際に錯誤があれば95条が適用されるというのが判例の立場になっています。 そのため、解答は✖となります。

 

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