司法試験民法短答式試験過去問H30第3問―意思表示

みなさん、こんにちは!

今日は、民法過去問H30の第3問を解説していきます。

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〔第3問〕(配点:2)
意思表示に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№3])
ア.土地の仮装譲受人が当該土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸した場合,その建物賃借人は,民法第94条第2項の「第三者」に当たらない。

イ.強迫による意思表示の取消しが認められるためには,表意者が,畏怖の結果,完全に意思の自由を失ったことを要する。
ウ.Aを欺罔してその農地を買い受けたBが,農地法上の許可を停止条件とする所有権移転の仮登記を得た上で,当該売買契約上の権利をCに譲渡して当該仮登記移転の付記登記をした場合には,Cは民法第96条第3項の「第三者」に当たる。
エ.協議離婚に伴う財産分与契約において,分与者は,自己に譲渡所得税が課されることを知らず,課税されないとの理解を当然の前提とし,かつ,その旨を黙示的に表示していた場合であっても,財産分与契約について錯誤による無効を主張することはできない。
オ.特定の意思表示が記載された内容証明郵便が受取人不在のために配達することができず,留置期間の経過により差出人に還付された場合,受取人がその内容を十分に推知することができ,受領も困難でなかったとしても,当該意思表示が受取人に到達したものと認められることはない。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ

(参照条文)民法
(虚偽表示)
第94条 (略)
2 前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない。
(詐欺又は強迫)
第96条 1,2(略)
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意の第三者に対抗することができない。

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001258877.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001259697.pdf

アについて

前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

出典『民法第94条 - Wikibooks

第三者の要件は以下のようになります。

  1. 虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者
  2. 虚偽表示によって作り出された外形について
  3. 新たに
  4. 独立して
  5. 利害関係を有するに至った者

本問題は、土地についての仮装譲渡でその土地が第三者に譲渡されれば、第三者はその目的物に関して利害関係を有すると言えます。

ただ、今回は建物を貸借したにとどまり、土地の利害関係を有していません。

そのため、解答は〇となります。

イについて

詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

出典『民法第96条 - Wikibooks

強迫は原則として取り消すことができるので解答は✖となります。 

ウについて

AとBの間で詐欺があり、その外形を信頼したCが「新たに」「独立して」利害関係を有することになっていることが分かります。

Cは当事者・一般承継人ではないため、96条3項の第三者(類推適用で94条2項の第三者となる)ということができます。

よって、解答は〇となります。

 

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エについて

判例では「財産分与契約の際、分与者が自己に課税されないことを当然の前提とし、かつ、その旨を黙示的に表示していたときには、同期の錯誤として無効になる」とされました。

よって、解答は✖となります。

オについて

ここでは到達主義が問題となります。相手方に届かなければ効果が生じないという原則ですが、「到達」とは以下のことを示します。

  1. 相手方が受領し又は了知されることまで必要としない
  2. 相手方の勢力範囲・支配圏内に入ること
  3. 釈迦会通念上、了知可能な状態に置かれること

出典『内容証明 内容証明郵便を出してから 配達されてから 受取拒絶 拒否 不在 留守 宛先不明 対策

また、最高裁10年6月11日の判決の裁判要旨では以下のように述べられています。

遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。

要旨で示されているように内容を十分に推知することができ、受領も困難でない場合には受け取り方法を指定することで、郵便物を受領することが可能です。

そのため、解答は✖となります。

 

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