司法書士試験H29午前の部第19問【不当利得】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士H29午前の部第19問を解説していきます。

 

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第19問 不当利得に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア 利得に法律上の原因がないことを善意の受益者が認識した後に,受益者の保持する利益がその責めに帰すべき事由により消滅した場合には,その受益者の不当利得返還義務の範囲は減少しない。

イ 悪意の受益者は,その受けた利益に利息を付して返還しても損失者になお損害がある場合には,不法行為の要件を充足していないときであっても,その賠償の責任を負う。

ウ 善意の受益者は,法律上の原因なく利得した金銭を利用することで得られた運用収益については,社会観念上受益者の行為の介入がなくても損失者が当然に取得していたものであったとしても,不当利得として返還する義務を負わない。

エ 法律上の原因なく代替性のある物を利得した受益者は,その利得した物を第三者に売却処分して現実に引き渡した場合において,その売却後にその物の価格が高騰したときは,売却代金額ではなく事実審の口頭弁論終結時の時価相当額を不当利得として返還する義務を負う。

オ 金銭をだまし取った者がその金銭で自己の債務を弁済した場合において,債権者がその金銭を悪意で受領したときは,債権者のその金銭の取得は,金銭をだまし取られた者に対する関係で,不当利得となる。

1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ

出典

問題『司法書士試験H29問題

解答『司法書士試験H29解答

アについて

民法703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う

判例:最高裁判決平成3年11月19日 要旨では「二 不当利得をした者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させない」と述べられます。

法律上の原因がないことを認識した後に利益が消滅しても返還義務の範囲は減少しないため、解答は◯となります。

イについて

民法704条
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

判例:最高裁 平成21年11月9日

要旨では「 民法704条後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない」と述べられます。

要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うのであるから、解答は✖となります。

ウについて

判例:最高裁昭和38年12月24日 要旨では「不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益については、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が右財産から当然取得したであろうと考えられる範囲において損失があるものと解すべきであり、その範囲の収益が現存するかぎり、民法第七〇三条により返還されるべきである」と述べられます。

運用収益についても受益者の行為がなくても損失者が当然取得できていたと考えられれば、不当利得として返還する義務を負うことになります。 そのため、解答は✖となります。

エについて

判例:最高裁判決平成19年3月8日

要旨では「 法律上の原因なく代替性のある物を利得した受益者は,利得した物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負う」と述べられます。

要旨によればエのような事情の下でも、原則的に売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うことになるため解答は✖となります。

オについて

判例:最高裁判決昭和49年9月26日

金銭を騙取して自己の債務の弁済をした場合、債権者がその弁済を悪意又は重大な過失で受け取ったときは法律上の原因を欠いて不当利得になるとします。

そのため、解答は◯となります。以上、ア=オ=◯・イ=ウ=エ=✖なので解答は2となります。

 

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