司法試験民法短答式試験H27第2問【意思表示】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H27民法第2問を解説していきます。

〔第2問〕(配点:2) 意思表示に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。(解答欄は,[№2]) 1.Aは,その所有する甲土地についてBと仮装の売買契約を締結し,その旨の所有権移転登記をした。その後,Bがこの事情を知らないCに甲土地を売却した場合,BからCへの所有権移転登記がされていないときでも,Aは,Cに対し,AB間の売買契約の無効を主張することができない。 2.Aは,その所有する甲土地についてBと仮装の売買契約を締結し,その旨の所有権移転登記をした。その後,Bがこの事情を知らないCから500万円を借り入れたが,その返済を怠ったことから,Cが甲土地を差し押さえた場合,甲土地の差押えの前にCがこの事情を知ったとしても,Aは,Cに対し,AB間の売買契約の無効を主張することができない。 3.Aの代理人であるBは,その代理権の範囲内でAを代理してCから1000万円を借り入れる旨の契約を締結したが,その契約締結の当時,Bは,Cから借り入れた金銭を着服する意図を有しており,実際に1000万円を着服した。この場合において,Cが,その契約締結の当時,Bの意図を知ることができたときは,Aは,Cに対し,その契約の効力が自己に及ばないことを主張することができる。 4.AのBに対する甲土地の売買契約の意思表示について法律行為の要素に錯誤があった場合でも,Aに自らの錯誤を理由としてその意思表示の無効を主張する意思がないときには,Bは,Aの意思表示の無効を主張することはできない。 出典 問題『司法試験H27民法短答式問題』 解答『司法試験H27民法短答式解答

アについて

民法94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

虚偽表示の場合には善意の第三者に対抗することができないため、Aは無効を主張できません。そのため、解答は◯となります。

 

 

イについて

Cは第三者に該当しますが、最高裁昭和55年9月11日判決では「善意の存否は第三者が利害関係を有するに至った時期を基準として決すべき」としています。

本件では差押えをする前に仮装譲渡について知っているため、94条にいう善意の第三者には該当しません。そのため、解答は✖となります。

ウについて

民法93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

最高裁昭和42年4月20日判決では「代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法第九三条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である」と述べられています。

代理行為であっても、その行為について相手方が知ることができたときは本人に責任はなくなりますので、解答は◯となります。

エについて

民法95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

最高裁昭和40年9月10日判決では「 表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない」とされています。

95条は表意者の保護が目的であり、上記判決では第三者となっていますが相手方でも表意者の意思に反するようなことを行えません。

そのため、解答は◯となります。