司法試験民法短答式試験過去問解説H28第8問【不動産物権変動】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第8問を解説していきます。

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〔第8問〕(配点:3)
甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№8])

ア.Cが相続放棄をした後に,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,CからEへの持分移転登記を経由した場合,Eは,B及びDに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

イ.AがEに甲土地を遺贈し,遺言により指定された遺言執行者Fがある場合において,Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1の持分をGに売却し,BからGへの持分移転登記を経由したときは,Eは,Gに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

ウ.B,C及びDの遺産分割協議により,甲土地はBが取得することとされた場合であっても,その後,Dが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,DからEへの持分移転登記を経由したときには,Eは,Bに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

エ.Aが「甲土地はCに相続させる」旨の遺言をしていた場合において,Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1の持分をEに売却し,BからEへの持分移転登記を経由したときには,Cは,Eに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

オ.Dが甲土地を単独で相続した旨の不実の登記をした上で,甲土地をEに売却し,DからEへの所有権移転登記を経由した場合,Bは,Eに対し,甲土地について2分の1の持分の取得を主張することができない。

1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ オ 5.ウ エ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

本件での持ち分割合は、Bが2分の1・CとDがそれぞれ4分の1となっています。

アについて

民法939条では「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」とされています。

相続放棄をすると初めから相続人とならなかったものとなり、その分の相続分は本件であればDに移り、それぞれの相続分はBとDが2分の1・Cがなしということになり、Eは持ち分の取得を行うことができないと考えられます。

そのため、解答は✖となります。

図の参考:『法定相続分(相続できる割合)を知ろう(パターン別・家系図付) | 相続・相続税のご相談なら相続ハウス

イについて

本問題では遺贈と法定相続分のどちらが優先されるかが問題となりますが、そもそも「遺贈」とは被相続人と意思によるものであるのに対して、「法定相続」というのはその意思がなくても必然的に設定されているものです。

この性質を考えると、意思によらない「法定相続」よりも被相続人の意思による「遺贈」を優先すべきであるという考えを導くことができます。

そのため、本問題であれば甲土地を遺贈されたEは法定相続分を取得したGに対して、甲土地の所有権を取得することができると考えられるので、解答は◯となります。

参考:『遺言書と法定相続分はどちらが優先される?(1) | 相続のバイブル

ウについて

遺産分割協議は遺言があったとしても分割方法が不明確である場合や、遺言がない場合などに行われます。遺産分割協議で財産の分割方法などがまとまると、やり直すことはできません。

 

エについて

遺言は被相続人が自由に財産の分割を決めることができるため、法定相続分よりも尊重されるべきものであると言えます。

本問題では「Cに相続させる」というふうに遺言で定められていることから、Bはその土地を相続することができず、それによって土地を手に入れたEも所有権の取得を主張できません。

そのため、解答は✖となります。

オについて

不実の登記は本来であれば無効となるはずですが、それを取り消すことでその登記を信頼した第三者に不利益がでることもあります。そのため、取り消す・取り消せない場合があるとということができます。

そのため、解答は✖となります。

 

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