司法試験民法短答式試験過去問解説H28第18問【履行の強制】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第18問を解説していきます。 

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〔第18問〕(配点:2) 履行の強制に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№18])

ア.判例によれば,不作為を目的とする債務の強制執行として間接強制をするには,債権者において,債務者がその不作為義務に違反するおそれがあることを立証すれば足り,債務者が現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はない。

イ.判例によれば,事態の真相を告白して陳謝の意を表明する内容の謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずる判決の執行は,間接強制によらなければならず,代替執行をすることはできない。

ウ.不作為を目的とする債務については,債務者の費用で,債務者がした行為の結果を除去することを裁判所に請求することができる。

エ.工作物の撤去を命ずる判決が確定した場合,その判決の執行は,代替執行によることができるが,間接強制によることはできない。

オ.登記義務者に対し所有権移転登記手続を命ずる判決が確定した場合,その判決の執行は間接強制によらなければならない。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

最高裁判決平成17年12月9日判決では「 不作為を目的とする債務の強制執行として間接強制決定をするには,債権者において,債務者がその不作為義務に違反するおそれがあることを立証すれば足り,債務者が現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はない」と述べられます。

間接強制とは

「債務者が債務の履行をしない場合には一定の額の金銭を支払うべき旨をあらかじめ命ずる間接強制決定をすることで,債務者に対し,債務の履行を心理的に強制し,将来の債務の履行を確保しようとするもの」

こうしたものでありますが、現に義務違反が生じていないと間接強制決定を行えないというのでは、将来の債務の履行を確保するという目的を達成できません

特に、不作為請求権は債務不履行後に実現することは不可能であり、一度は義務違反を甘受しなければ間接強制決定を求められないというのは、債権者の有している不作為請求権の実効性を損なうことになってしまいます。

その決定の発令後に金銭を取り立てるためには執行文の付与を受ける必要があり、決定に係る義務違反があったという事実を立証することが求められます。

間接強制決定の段階における義務違反の事実の立証を求めなくても、債権者の保護に欠けることはないとしているので、解答は◯となります。

イについて

判例:最高裁昭和31年7月4日

判決では、「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあっては、強制執行も代替作為として」と述べられ、間接強制によらないことも可能とされています。 そのため、解答は✖となります。

ウについて

民法414条3項で「不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる」とされているため、解答は◯となります。

エについて

民事執行法173条1項
第168条第1項、第169条第1項、第170条第1項及び第171条第1項に規定する強制執行は、それぞれ第168条から第171条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条第1項に規定する方法により行う。この場合においては、同条第2項から第5項までの規定を準用する。
同法171条1項
民法第414条第2項本文又は第3項に規定する請求に係る強制執行は、執行裁判所が民法の規定に従い決定をする方法により行う。

173条1項・代替執行と171条・強制執行(間接強制)それぞれ行うことができるので、解答は✖となります。

オについて

民事執行法174条
意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは第27条第1項の規定により執行文が付与された時に、反対給付との引換え又は債務の履行その他の債務者の証明すべき事実のないことに係るときは次項又は第3項の規定により執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす

174条では意思表示の擬制について述べられます。 民事執行法172条に基づいて間接強制を行うことができますが、債権の性質から意思表示と同じような効果を得られればよく、意思表示の実行を強制する必要はありません。

間接強制でもよくなるため解答は✖となります。以上、ア=ウ=◯・イ=エ=オ=✖なので解答は1となります。

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