司法試験民法短答式試験過去問解説H28第10問【相続関係及び利害関係】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第10問を解説していきます。

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〔第10問〕(配点:2)
相隣関係及び地役権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№10])

ア.共有物の分割によって袋地(他人の土地に囲まれて公道に通じない土地)が生じた場合,当該袋地の所有者は,囲繞地(袋地を囲んでいる土地)のうち,他の分割者の所有地についてのみ無償の通行権を有するが,その通行権は,他の分割者の所有地について売買がされた場合には消滅する。

イ.袋地の所有権を取得した者は,所有権取得登記を経由していなくても,囲繞地の所有者及び囲繞地につき利用権を有する者に対して,公道に至るため囲繞地を通行する権利を主張することができる。

ウ.甲土地を所有するAは,甲土地の賃借人であるBがC所有の乙土地の上に通路を開設した場合であっても,Aがその通路の利用を20年間続けていたときには,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権の時効取得を主張することができる。

エ.甲土地を所有するAと,乙土地を所有するBとの間で,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権設定の合意がされたが,通行地役権の設定登記がない場合,その後,Aから甲土地を譲り受けたCは,甲土地の所有権移転の登記を経由しても,Bに対し,通行地役権を主張することができない。

オ.甲土地をAとBが共有する場合において,Bが,甲土地を要役地,C所有の乙土地を承役地とする通行地役権を時効により取得したときは,Aも,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権を取得する。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

売買がされた場合でも袋地は袋地のままでありその性質は失われていないため、通行権は消滅しないと考えられます。そのため、解答は✖となります。

 

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イについて

まず、最高裁昭和47年4月14日判決では「 袋地の所有権を取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者ないし利用権者に対して、囲繞地通行権を主張することができる」と述べられています。

「民法二一〇条において袋地の所有者が囲繞地を通行することができるとされているのも、相隣関係にある所有権共存の一態様として、囲繞地の所有者に一定の範囲の通行受忍義務を課し、袋地の効用を完からしめようとしているため」であります。
この趣旨に照らすと「袋地の所有者が囲繞地の所有者らに対して囲繞地通行権を主張する場合は、不動産取引の安全保護をはかるための公示制度とは関係がない」ため、所有権取得登記なしでも通行権を取得できるとしています。

以上より、解答は◯となります。

ウについて

最高裁昭和30年12月26日判決では「 通行地役権の時効取得に関する「継続」の要件としては、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によつてなされることを要するものと解すべきである」とされています。

ここで述べられるように、通行地役権の時効取得には要役地所有者が承役地の土地上に道路を解説することが「継続」の要件とされています。そのため、解答は✖となります。

エについて

判例では要役地が売買されることで買主は地役権を取得しすることになり、要役地の所有権移転登記を行えば地役権の取得も第三者に対抗することができるとされています。そのため、解答は✖となります。

オについて

民法284条1項では「土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する」とされています。そのため、解答は◯となります。

以上、ア=ウ=エ=✖・イ=オ=◯なので解答は4となります。

 

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