司法試験民法短答式試験過去問解説H28第9問【動産の即時取得】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第9問を解説していきます。

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〔第9問〕(配点:2)
動産の即時取得に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№9])

ア.Aがその占有する時計をBに売却した場合において,Bが,即時取得により当該時計の所有権を取得したことを主張するためには,当該時計の引渡しの当時,自己に過失がなかったことを立証しなければならない。

イ.Aがその占有する時計をBに売却した場合において,Bが,当該時計の引渡しの当時,当該時計の所有者がAであることに疑いを持っていたときは,Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。

ウ.Aがその占有する時計をBに売却した場合において,その売買契約の際に,以後AがBのために占有する意思を表示したが,当該時計の引渡しが現実にされていないときは,Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。

エ.A所有の土地上にある立木を,Bが,B所有の土地上にあるものと過失なく信じて伐採した場合には,Bは,即時取得により当該伐木の所有権を取得する。

オ.Aがその占有する中古自動車をBに売却し,現実に引き渡した場合において,当該中古自動車につき道路運送車両法による登録がされていたときは,Bは,即時取得により当該中古自動車の所有権を取得することができない。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

最高裁昭和41年6月9日判決では「 民法第一九二条により動産の上に行使する権利を取得したことを主張する占有者は、同条にいう『過失ナキ』ことを立証する責任を負わない。」とされているため解答は✖となります。

その理由は「占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定
される以上(民法一八八条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについて
は過失のないものと推定され」るからとされています。

イについて

即時取得には要件が定めらており、その中に「善意・無過失」で占有を始めたことが含まれますが善意のみ推定されることになります。

本問題では、疑いを持ったことによってAが所有者でないことを知ることができた=有過失になると考えられ、即時取得の要件を満たすことができないことになります。そのため、解答は◯となります。

ウについて

占有改定ではもとの占有の事実に変更を与えるものではなく、現実に所有をしていない買主に即時取得を認めることは取引の安全を害する、ということが理由として挙げられています。

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そのため、解答は◯となります。

エについて

民法192条で定められる即時取得の要件の中には「取引によって占有を承継すること」が挙げられています。そのため、エの場合には即時取得は成立しないことになるので、解答は✖となります。

オについて

最高裁判決昭和62年4月24日では「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、登録が所有権の得喪並びに抵当権の得喪及び変更の公示方法とされているのであるから(同法五条一項、自動車抵当法五条一項)、民法一九二条の適用はないものと解するのが相当」とされています。

その理由は登録していることで取引の安全を確保できるからであり、登録していない車のみに適用されることが相当という結論が導けます。以上より、解答は◯となります。

ア=エ=✖・イ=ウ=オ=◯なので解答は2となります。 

 

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