司法試験民法短答式試験過去問H30第20問―【弁済の目的物の供託】

みなさん、こんにちは!

今日は、民法過去問H30の第20問を解説していきます。

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〔第20問〕(配点:2)
弁済の目的物の供託に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№20])
ア.債務の弁済について利害関係を有する第三者が債権者に弁済の提供をしたのに債権者がその受領を拒んだ場合,当該第三者は,債務者の意思に反するときは,供託することができない。
イ.口頭の提供をしても債権者が弁済の受領を拒むことが明確な場合,債務者は,口頭の提供をしなくても,供託することができる。
ウ.指名債権が二重に譲渡され,確定日付のある2つの譲渡通知が債務者に到達したが,その先後関係が不明である場合,債務者は供託することができる。
エ.金銭債務について弁済供託がされた場合,債権者が供託金を受け取った時に債務は消滅する。
オ.自己が相当と考える額を債務者が供託した場合には,債務の全額に満たなくても,その額については供託は有効である。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ 

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001258877.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001259697.pdf

アについて

民法474条第2項にて利害関係を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済できないとされていますが、本問題の第三者は利害関係を有しています。

また、弁済の受領を拒否された場合に供託することができますが、この場合には民法494条にて次の要件が掲げられてます。

  1. 債権者が受領を拒否すること
  2. 債権者が弁済を受領できないこと
  3. 債権者が誰なのか確知できないこと

本問題では1に該当しているため、供託を行うことができます。そのため、解答は✖となります。

イについて

判例では債権者が明確に債務者の履行を受領しないという意思を表明している場合には、さらに簡略化して口頭の提供を行わなくても債務不履行責任を負わず、供託を行うことができます。

そのため、解答は◯となります。

ウについて

確定日付のある通知が同時に到達した場合、判例では債務者は債権者不確知を要因として供託することができるとしています。そのため、解答は◯となります。

エについて

 

オについて

最高裁平成5年2月18日では相当と考える賃料に関することが述べられています。

「借地法12条2項の「相当ト認ムル」賃料は客観的にみて適正となる賃料ではなく、賃借人が賃借人が自ら相当と認める賃料」のことを言うとしています。

→ただし、「それは賃借人の恣意を許す趣旨ではなく、賃借人の供託した賃料額が適正な賃料額と余りにもかけ離れている場合には、特段の事情のない限り、債務の本旨に従った履行とはいえ」ないとします。

そして、「賃借人が固定資産税その他当該賃借土地に係る公租公課の額を知りながら、これを下回る額を支払い又は供託しているような場合には、その額は著しく不相当」であり、債務不履行となるとしています。

このように有効となる場合もあるが、債務不履行になると問われている点もあると示されていることから、解答は✖となります。

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