司法試験民法短答式試験過去問解説H28第20問【弁済】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第20問を解説していきます。

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〔第20問〕(配点:3)

弁済による代位に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№20])

ア.債務者の意思に反することなく有効に弁済した第三者は,弁済によって当然に債権者に代位する。

イ.判例によれば,不動産を目的とする一つの抵当権が数個の債権を担保し,そのうちの一つの債権のみについての保証人が当該債権に係る残債務全額につき代位弁済した場合において,抵当権の実行による売却代金が被担保債権の全てを消滅させるに足りないときには,債権者と保証人は,両者間にその売却代金からの弁済の受領について特段の合意がない限り,その売却代金につき,債権者が有する残債権額と保証人が代位によって取得した債権額に応じて案分して弁済を受ける。

ウ.代位弁済によって,全部の弁済を受けた債権者は,債権に関する証書を代位者に交付すれば足り,自己の占有する担保物を代位者に交付する必要はない。

エ.AのBに対する1200万円の債権について,保証人C,物上保証人D(担保物の価額900万円),物上保証人E(担保物の価額300万円)が存在する場合,C,D及びEの間における弁済による代位の割合は,2対3対1となる。

オ.判例によれば,保証人が債権者に代位弁済した後,債務者から当該保証人に対し一部弁済があったときは,その弁済は,保証人が代位弁済によって取得した求償権だけでなく,債権者に代位して取得した原債権に対しても弁済があったものとして,それぞれに充当される。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

意思に反することなく有効に弁済したとしても、債務の性質がこれを許さない場合には弁済することができず、債権者に代位することもできません。そのため、解答は✖となります。

 

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イについて

最高裁平成17年1月27日判決ではイの通りに要旨が述べられているため、解答は◯となります。

理由として、本件の場合には債権の一部に代位弁済がされた場合とは異なり

  1. 債権者は、保証人が代位によって取得した債権について、抵当権の設定を受け、かつ、保証人を徴した目的を達して完全な満足を得ている
  2. 保証人が当該債権について債権者に代位して上記売却代金から弁済を受けることによって不利益を被るものとはいえない
  3. また,保証人が自己の保証していない債権についてまで債権者の優先的な満足を受忍しなければならない理由はない

この3つが挙げられています。

ウについて

民法503条では代位弁済で全部の弁済を受けた債権者は

  1. 債権に関する証書
  2. 自己の占有する担保物

この2つを代位者に交付しないといけないとされています。そのため、解答は✖となります。

エについて

民法501条5項では「五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する」とされています。

エの問題では、まず保証人と物上保証人合わせて3人いるので、それぞれの代位の割合は3分の1となりますが、物上保証人が複数いるのでCの400万円を引いた800万円については、DとEが各財産の価格で債権者に代位します。

DとEの割合が900:300=3:1であることから600:200になるため、解答は◯となります。

オについて

判例では「保証人が債権者に代位弁済したのち、債務者から右保証人に対し内入弁済があつたときは、右の内入弁済は、右保証人が代位弁済によつて取得した求償権のみに充当されて債権者に代位した原債権には充当されないというべきではなく、求償権と原債権とのそれぞれに対し内入弁済があつたものとして、それぞれにつき弁済の充当に関する民法の規定に従つて充当されるべきものと解するのが相当」とされています。

そのため、解答は◯となります。

以上、ア=ウ=✖・イ=エ=オ=◯なので解答は1となります。

 

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