司法試験民法短答式試験過去問H30第17問―【詐害行為取消権】
みなさん、こんにちは!
今日は、民法過去問H30の第17問を解説していきます。
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〔第17問〕(配点:2)
詐害行為取消権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№17])
ア.相続の放棄は,相続の放棄をした債務者が債務の履行を長期間怠るなど背信性の程度が著しい場合に限り,詐害行為取消権の対象となる。
イ.不動産の買主は,その売主がその不動産を第三者に贈与した場合,それによって売主が無資力となったとしても,当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができない。
ウ.詐害行為取消権の対象となる贈与の目的物が不可分なものであるときは,その価額が債権額を超過する場合であっても,贈与の全部について取り消すことができる。
エ.贈与が虚偽表示に該当することを知らない転得者との関係において,当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることはできない。
オ.債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において,債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は,詐害行為取消権行使の対象とならない。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ出典
アについて
最高裁昭和49年9月20日判決では、相続の放棄というのは「既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ積極的にその増加を妨げる行為に過ぎないとみるのが、妥当」としています。
そのため、相続放棄のような身分行為は民法424条にいう詐害行為取消権の行使の対象取らないとしています。
よって、解答は✖となります。
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イについて
「贈与」とは金銭対価を得ずにタダで財産をあげるものであり、債務者の財産がなくなることは明らかです。
そのため、贈与を詐害行為取消権の対象とすることができるため、解答は✖となります。
ウについて
最高裁昭和30年10月11日判決の要旨では以下のように述べられています。
詐害行為となる債務者の行為の目的物が、不可分な一棟の建物であるときは、たとえその価額が債権者を超える場合でも、債権者は、右行為の全部を取り消すことができる。
目的物が不可分である場合には、価額が全額を超える場合でも行為の全部を取り消すことができるとしています。
よって、解答は〇となります。
エについて
そのため、無資力な債務者が贈与を行った際には債権者は詐害行為取消権を行使することができます。
よって、解答は✖となります。
オについて
平成10年6月12日判決の要旨では以下のように述べられています。
債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とすることができない。
ここにあるように、債権譲渡の通知は詐害行為取消権の対象とはなりません。詐害行為取消権の対象となるのは
- 債権者の財産の現象を目的とする行為
であり、それに対して
- 債権の譲渡行為
- それに関する譲渡通知
この二つはもとより別個のものとされています。よって、解答は〇となります。
以上、ア=イ=エ=×・ウ=オ=〇ですので解答は4となります。
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