司法試験民法短答式試験過去問H30第16問―【債権の目的】
みなさん、こんにちは!
今日は、民法過去問H30の第16問を解説していきます。
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〔第16問〕(配点:2)
債権の目的に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№16])
ア.金銭に見積もることができないものは,債権の目的とすることができない。
イ.外国の通貨で債権額を指定した場合には,債務者は,日本の通貨で弁済をすることができない。
ウ.元本債権が消滅したとしても,弁済期が到来した利息債権は,当然には消滅しない。
エ.甲倉庫内の米のうち1トンの引渡しを受ける旨の制限種類債権は,甲倉庫内の米が全て滅失したときは,履行不能となる。
オ.選択債権においては,別段の意思表示がないときは,選択権は債権者に属する。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ出典
アについて
債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
民法399条では、金銭に見積もることができなくても債権の目的とすることができ、 また、判例では僧侶が故人を供養する旨の契約は法律上有効なものであると判断されています。
以上より、解答は✖となります。
イについて
外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。
民法403条ではこのように規定されているほか、最判昭50・7・15では「外国の通貨で債権額が指定された金銭債権について、債権者は外国の通貨・日本の通貨どちらでも請求できる」としています。
よって、解答は✖となります。
ウについて
利息債権は元本債権に対する成立時の付従性を持っているため、元本債権がないと利息債権は成立しません。こちらは、基本権たる利息債権と支配権たる利息債権どちらにも共通します。
消滅に関して、基本権たる利息債権は元本債権の消滅で消滅しますが、支配権たる利息債権は元本債権が消滅してもすでに発生した利息債権は消滅することはありません。そのため、解答は◯となります。
エについて
種類債権は一定の量・物の引き渡しが目的とされていますが、制限種類債権はさらに場所などが限定されているものを言います。
そのため、通常の種類債権とは異なって、本件のように限定されている部分が滅失したら「履行不能」となる可能性もあります。
そのため、解答は〇となります。
オについて
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。
選択債権の選択権の帰属は「債務者」に属するとされています。よって、解答は✖となります。
以上、ア=イ=オ=✖・ウ=エ=◯なので解答は4となります。
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