司法試験過去問解説平成28年憲法短答式試験第1問

みなさん、こんにちは!

今日は司法試験憲法H28の第1問を解説していきます。

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〔第1問〕(配点:3)
私人間における人権保障に関する次のアからウまでの各記述について,判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№1]から[№3])
ア.企業者は,雇用の自由を有するから,労働者の思想,信条を理由として雇入れを拒んでも当然に違法ということはできないが,労働者の採否決定に当たり,その思想,信条を調査し,労働者に関連事項の申告を求めることまでは許されない。[№1]
イ.大学は,その設置目的を達成するため,必要な事項を定めて学生を規律する権能を有するから,私立大学が,その伝統,校風や教育方針に鑑み,学内外における学生の政治的活動につき,かなり広範な規律を及ぼしても,直ちに不合理ということはできない。[№2]
ウ.長期間にわたり形成された地方の慣習に根ざした権利である入会権については,その慣習が存続しているときは最大限尊重すべきであるから,権利者の資格を原則として男子孫に限る旨の特定の地域団体における慣習も,直ちに公序良俗に反するとはいえない。[№3]

問題『法務省:平成28年司法試験の実施について

解答『法務省:平成28年司法試験短答式試験結果

アについて

判例は三菱樹脂訴訟となります。

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企業側には自由に雇用するか否かを決定できる権利があることが認められました。

また、特定の団体について申告させたことについては

労働者を雇い入れようとする企業者がその採否拒否にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためにその者からこれに関する事項についての申告を求めることは違法とはいえない

として、申告はその者の思想や信条の調査には該当しないとしました。

ここから問題文の最後の部分が間違っていることが分かるので、解答は2となります。 

 

イについて

判例は昭和女子大事件になります。

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学生が政治活動に参加する際には届け出をするよう定めていましたが、学生が届け出を行わずに活動し、補導後も態度を直すことはありませんでした。

そこで退学処分を行った大学の裁量権の範囲が問題となりますが、私立大学などでこうした学生を放っておくのは望ましいことではないとしたほか、裁量の逸脱であるとは判決を出しませんでした。

そのため、解答は1となります。

 

ウについて

判決は地位等確認請求事件となります。

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この事件では以下の二つのことが争われました。

  1. 入会権を家の世帯主のみに限定すること
  2. 入会権を原則男子孫のみに限定すること

1については「代表者の差別を生じさせない」という点で、公序良俗に違反しないとしました。

ただ、2については公序良俗に違反しており民法90条の規定による無効とするのが妥当であると判示されました。

そのため、最後の部分が間違っているので解答は2となります。

 

次の問題はこちらになります。

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