司法試験過去問解説平成28年憲法短答式試験第4問

みなさん、こんにちは!

今日は司法試験憲法H28の第4問を解説していきます。

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〔第4問〕(配点:3)
都立高等学校の校長が教諭に対し,卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が,憲法第19条に違反するか否かについて判示した最高裁判所の判決(最高裁判所平成23年5月30日第二小法廷判決,民集65巻4号1780頁)に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№6]から[№8])
ア.卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,校長の職務命令は,「日の丸」や「君が代」に関する当該教諭の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。[№6]
イ.国旗に向かって起立し国歌を斉唱する行為は,一般的,客観的に見て,特定の思想の表明として外部から認識されるものと評価すべきであり,卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為が職務命令に従って行われたものと外部から認識することも困難であって,校長の職務命令は,特定の思想の有無について告白することを強要する面がある。[№7]
ウ.卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であり,歴史観ないし世界観との関係で「日の丸」や「君が代」に敬意を表明することには応じ難いと考える者が上記行為を求められることは,思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。[№8]

問題『法務省:平成28年司法試験の実施について

解答『法務省:平成28年司法試験短答式試験結果

 判例の解説は以下になります。

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アについて

起立斉唱行為とは儀式的なものであり、国旗としての「日の丸」の掲揚・国家としての「君が代」の斉唱は広く行われていました。

さらに、最高裁は

上告人に対して上記の起立斉唱行為を求める本件職務命令は,上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。

 『最高裁判決

としていて、職務命令が上告人の歴史観などを否定しないことを明らかにしています。

よって、解答は1となります。

イについて

職務命令に従って起立斉唱などを行ったとしても、それは儀式的なものであり、外部から思想を持っていると評価されるのは困難としました。

また、

本件職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。

としています。ここから、思想の告白などを強制していないことが明らかですので、解答は2となります。

ウについて

本件の職務命令は違法ではないとされましたが、最高裁では

個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなり,その限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。

としています。ここから、「間接的な制約になる」場合ががあることが分かるため、解答は1となります。

今回の判例で一番注意するのは、「職務命令が違法ではないが間接的な制約になる可能性がある」ということですので、選択で間違えないようにしましょう。

 

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