司法試験憲法短答試験H29第20問【憲法改正】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験憲法過去問第20問を解説します。
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〔第20問〕(配点:2)
憲法改正に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№41])ア.憲法改正には,国民投票において「その過半数の賛成」を必要とするとされているが,日本国憲法の改正手続に関する法律によって,「その過半数」とは,有権者総数の過半数を意味するとされている。
イ.憲法第96条第2項は,国民の承認を経た憲法改正について,「直ちにこれを公布する」と定めているが,ここで「直ちに」とされているのは,公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものである。
ウ.憲法を始源的に創設する「憲法制定権力」と憲法によって与えられた「憲法改正権」とは同質であるとの見解は,憲法改正の限界について理論上限界はないとする立場の根拠となり得る。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×
3.ア○ イ× ウ○ 4.ア○ イ× ウ×
5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
http://www.moj.go.jp/content/001224568.pdf問題http://www.moj.go.jp/content/001225947.pdf解答
アについて
アは、国民投票ということで憲法96条1項の解釈について見ていきましょう。
憲法96条1項
「各議院(衆議院・参議院)の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」
憲法改正が国民に承認されるには、国民投票において「過半数の賛成票」を必要とすると定められています。これは、みなさんのよく知るところかと思いますが、重要なのは「過半数」の意味は何か、です。
過半数の意味については度々議論になるところですが、これは有権者の過半数ではなく「投票率の過半数」と定められています。
投票数の過半数が賛成であれば(賛成の投票の数が投票総数の2分の1を超えた場合『総務省』)憲法改正となるため、アの問題は「×」となります。
ただ、この国民投票法には問題があり、総数の2分の1以上を判断する際には「賛成票・反対票の総数」しかみていません。つまり、棄権票が総数に入れられていないのです。
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例えば、投票数の内約が以下だったとしましょう。
- 賛成票40
- 反対票15
- 棄権票45
この場合、一見して賛成票が反対票・棄権票の総数を上回らないため憲法改正は行えないように思えます。しかし、判断する際は賛成票と反対票を合わせた総数のうち、賛成票が2分の1以上であればいいのでこの場合でも憲法改正は承認されます。
棄権票を考慮しないのに加えて、日本の国民投票法には「最低投票率」が設けられておらず、どんな投票率でも賛成票が投票総数の2分の1以上であれば憲法改正は行われます。そのため、国民投票法にはまだまだ課題が多いのが現状です。
イについて
イの問題も憲法96条の解釈になります。
憲法改正がされても、その新憲法の公布が1年・2年・数十年先(極端ですが)だったとしたらどうでしょうか。
これでは、せっかく憲法改正に賛成した人たちの国家に対する信頼を失うだけではなく、憲法改正に合わせて様々な準備を行った人たちからの信頼を失うことになります。
そのため、憲法改正がなされたら「直ちに公布」することで、多くの人からの信頼を失わずにすむことが考えられます。よって、イは「〇」となります。
ウについて
現在の議論では、憲法制定権力と憲法改正権は同質のものであると考えられています。
憲法制定権力とはウイキペディアのよれば「憲法を制定し、憲法上の諸機関に権限を付与する権力」と定義があります。要は、憲法制定で権原を与える権力ということですね。
これをもとにすると、憲法改正権というのは憲法を改正することで諸機関に権限を与える権力と言えますから、同質のものであることには異論はないでしょう。
そのため、言い過ぎかもしれませんが、憲法制定と憲法改正が同質のものであるということから、憲法改正にも限界はないとするのが通説です。そのため、解答は2となります。
ただ、憲法制定と憲法改正が同等のものであるからといって、憲法改正権が憲法制定権力から導き出されている理論であることを考えれば、憲法制定権力を否定しうる憲法改正は許されません。
そのため、ほぼ同質ではあるものの憲法改正権が認められない場合があると覚えておきましょう。
以上、ア=×、イ=ウ=〇より5が正解となります。
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