司法試験問題解説H29~第16問【内閣及び総理大臣について】

みなさん、こんにちは!

今日は、内閣に関する司法試験の問題を解説していきます。

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内閣及び内閣総理大臣に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№33]から[№35])

ア.憲法は閣議について規定していないが,内閣が行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負うとする憲法第66条第3項の趣旨により,会合しないで文書を各大臣間に持ち回って署名を得る持ち回り閣議は許されないとされている。[№33]

イ.内閣の総辞職について規定している憲法第70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」とは,内閣総理大臣が死亡した場合のほか,憲法第58条第2項に基づき内閣総理大臣が除名により国会議員の地位を失った場合に限られる。[№34]

ウ.憲法第73条第6号は,内閣の政令制定権を規定しているところ,法律を執行するための必要な細則を定める執行命令及び法律が政令に委任した事項を定める委任命令は許されるが, 既存の法律に代替する内容を定める代行命令は許されない。[№35]

司法試験 H29 【第16問】』 『司法試験 解答

アについて

閣議の規定については憲法に規定されておらず、内閣法に閣議の規定がされています。閣議では、条約・政令などの署名を行うわけですが、この署名は出席者全員の署名が必要とされています。

本件「ア」では、持ち回り閣議が許されないとされていますが、これは実際に行われる閣議で認められています(ありえなそうな名前の閣議ですが)。

「時間がない!」

「これは緊急だから早く署名がほしい!」

こういったときには、持ち回り閣議が開催されていることがあるようです。確かに、いちいち集まるよりも持ち回りで行った方が早く済みますからね。そのため、アの解答は「2」ということになります。

イについて

内閣が総辞職する要因

  1. 内閣不信任決議の可決後・信任案否決後、10日以内に衆議院が開催されない場合(憲法69条
  2. 内閣総理大臣が欠けたとき(憲法70条
  3. 衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったとき(憲法70条

この3つの場合があり、問題になっているのは②の「内閣総理大臣が欠けたとき」です。これには、死亡・内閣総理大臣、議員としての資格の喪失に加え、内閣総理大臣自身による辞職の場合も含まれています。

そのため、「イ」の問題の解答は「2」ということになります。せっかくですから、他の総辞職の内容も押さえておきましょう。

 

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ウについて

内閣には、執行命令・委任命令という命令が認められています。

委任命令とは

委任命令というのは、法律の内容を定めてしまう命令であるため、国会のみで法律をつくれる国会中心立法の原則に背くことになりかねないため、委任命令は漠然としたものではなく具体的な内容にすることが求められます(白紙委任の禁止

委任命令の例

よくある例として挙げられるのが、国家公務員法102条1項で人事院規則に定められる「政治的行為」をしてはならないとされているのに、何を政治的行為というのか分からないため白紙委任ではないかという疑問が起こります。

ただ、これは公務員的な立場に立つとより政治的に中立性が求められ、その中立性を損なうような行為を禁止していることが明確であるため、白紙委任ではないとした裁判例があります。

執行命令

執行命令というのは、法律を実行するためのその手続きなどを定める命令になります。これは、法律の委任に基づく委任命令とは異なり、私たちの権利を制限しないことが特徴の命令です。

代行命令

代行命令というのは、行政府独自で定めることができるような命令のことをいいます。そのため、法律の細則を定める執行命令や法律の委任による委任命令とは、かなり性格の違った命令になります。

上記を踏まえたうえで「ウ」をみていくと、政令制定権により執行命令・委任命令を定められることができるため前半は〇、後半については、法律は憲法の次に大きな影響があるものですからこれ反する命令は許されないため(憲法に反する命令も同様)後半も〇で、答えは「1」になります。

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