司法試験過去問解説H29~第12問【天皇の人権・天皇に関する事項】
みなさん、こんにちは!
今日は、天皇の人権・天皇に関する事項を解説していきます。
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〔第12問〕(配点:3)
天皇に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№23]から[№25])
ア.天皇の人権には,天皇の象徴たる地位に基づく制約があり,特定の政党に加入することや国籍を離脱することは認められないが,学問の自由についてはかかる制約を受けることなく一般の国民と同等に保障されている。[№23]
イ.判例は,天皇が日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることに鑑み,天皇には民事裁判権が及ばないとし,摂政についても,天皇の名でその国事に関する行為を行うことから同様であるとしている。[№24]
ウ.憲法第2条は,皇位が世襲のものである旨定めているところ,その具体的な在り方を定める皇室典範において,皇位の継承において皇長子の長子より皇次子を優先させることとしても憲法に反するものではない。[No.25]
司法試験 H29 【第12問】 問題 司法試験 H29 解答
アについて
天皇は、実際特定の正当への加入は認められませんし、学問の自由も制限することが知られます。基本的人権は国民全員に保障されていますが、天皇にはそうした人権も制限されることになっています。
これはやはり戦前の影響もあり、天皇は「政治的な発言」や「国の決める事項」に影響を与えてはいけません。
その例として、天皇陛下の生前退位の「お気持ち」の表明では、直接「生前退位します」と伝えてしまうと、皇室典範を改正するという政治的な発言という表現を与えてしまうため、間接的に生前退位を示していました。
以上より、解答は2となります。
イについて
解答は2ということですが、問題が判例に基づいているため判例を見ながら解説していきます。
天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である。 「天皇民事裁判権判例」
日本国・国民統合の象徴であるゆえ、天皇には民事裁判権は及びません。
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を適用する。 「日本国憲法第5条」
摂政は、「天皇の名で」国事に関する行為を行います。ここまでみてくると、まったく間違っていない気もします。
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しかし、
摂政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。 「皇室典範 21条」
摂政も在任中は訴追されない、つまり刑事事件にも関係しないということですが、上記皇室典範21条後半に訴追の権利は害されないということから、在任中には刑事裁判で責任を問われることはありませんが、退位したときには刑事訴追される場合があるということです。
ちなみに、天皇は民事裁判もされませんし、刑事責任も問われることはないとされていることは覚えておきましょう。『天皇 刑事訴追 民事裁判』
以上より、解答は2となります。
ウについて
皇室典範第2条 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。一 皇長子二 皇長孫三 その他の皇長子の子孫四 皇次子及びその子孫五 その他の皇子孫六 皇兄弟及びその子孫七 皇伯叔父及びその子孫2 前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。3 前2項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。
第3条 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる。
このように、皇室典範では皇位継承の順位が決められてますが、皇室典範3条にみられるように、なんらかの事情があれば皇位継承の順序を変更できるとされています。そのため、ウは正解であるということです。
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