司法試験憲法短答試験過去問解説H29第9問 【第三者所有物没収事件判決】
みなさん、こんにちは!
今日は、試験憲法過去問第9問を解説します。
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〔第9問〕(配点:2)
第三者所有物没収事件判決(最高裁判所昭和37年11月28日大法廷判決,刑集16巻11号1593頁)に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№20])ア.前記判決は,被告人以外の第三者の所有物(以下「第三者所有物」という。)を没収する場合において,当該第三者に対し告知,弁解,防御の機会を与えることなくその所有物を没収することは,適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科するに外ならない旨判示した。
イ.前記判決は,被告人に対する附加刑として科される第三者所有物に対する没収の言渡により,当該第三者の占有権が剥奪されるにとどまり,所有権剥奪の効果は生じないことを,その判断の前提としている。
ウ.前記判決では,第三者所有物について没収の言渡を受けた被告人は,その没収の裁判の違憲を理由として上告することができるとされた。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×
3.ア○ イ× ウ○4.ア○ イ× ウ×
5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
本問題は、第三者所有物事件判決をもとにしているため、まずはその判決を見ていこうと思います。
第三者所有物没収事件判決
この事件では、関税法を理由として第三者の所有物を没収することが、憲法31条・29条に違反しないかが争われました。
最高裁の判旨では、第三者に何も告知せずにその所有物を没収することは憲法29条の財産権を侵害しており、適正な手続きによらず財産を奪うことは憲法31条の罪刑法定主義に反していることから、第三者の所有物の没収が違法なものとしました。
さらに、第三者の所有物を没収された被告人は、その没収が違法であることを理由に上告できるとしています。これをふまえたうえで、問題をみていきましょう。
アについて
アは、判決の通り、第三者に弁明などの機会を与えずその所有物を没収することは、憲法31条の罪刑法定主義の観念によらずに財産権を侵害するとしています。よって、アの答えは「〇」となります。
イについて
イの問題について、関税法の没収は「被告人の所有に属すると否とを問わず、その所有権を剥奪して国庫に帰属せしめる処分」としており、占有権だけではなく所有権を剥奪ものとしています。
よって、イの答えは「×」となります。
ウについて
ウは、最初で被告人は第三者の所有物の没収が違法であることを理由に上告できるとしていますから、答えは「〇」となります。
第三者所有物没収事件単体での出題でしたが、財産権との関りが強いため、憲法29条に関連する問題として出題されることもあるため、注意していきましょう。
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