憲法判例【起立斉唱命令拒否事件】と憲法19条思想良心の自由

みなさん、こんにちは!

今日は、起立斉唱命令拒否事件(再雇用取消請求拒否事件)を解説します。

参考は、最高裁判決になります。

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争点

本件上告人は元教諭の立場にあり、非常職(非常勤)に応募しました。

しかし、教諭時代に国歌斉唱の際に起立していなかったことを理由に、採用を拒否されました。

この採用拒否に対して、本件上告人は教諭時代の起立斉唱命令が思想良心の自由を侵していると主張し、損害賠償・再雇用拒否処分の取り消しを求めて東京都を訴えた事件。

教諭時代の国歌斉唱の起立命令が、思想良心の自由を侵害しているかどうかが争点になります。 

判決

まず、最高裁は「起立斉唱行為は学校の儀式的行事における慣例上の儀式的な所作としての性質を有するものであ」ると述べています。

「起立斉唱行為は学校の儀式的行事における慣例上の儀式的な所作として外部から認識されるものであって、特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であ」るということも述べられています。

つまり、起立行為は儀礼的なもので、それには思想良心の表明を含まれません。学校の行事で起立している人をみて、特定の思想を持っていると判断できませんよね。

 

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重要フレーズ

「起立斉唱行為は国旗及び国家に対する敬意の表明の要素を含む行為」であり、また、起立斉唱行為・命令は、「自己のもつものと違う外部的行動を求められる」

起立斉唱行為は、国への忠誠心的なものを持っており、それは特定の思想をもつ者に対して違う行動を求めることを認めています。

ここだけみると起立斉唱命令は、思想良心の自由を侵害すると思うでしょう。

しかし、次の文をみてみましょう。

「職務命令は高等学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義、在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿い、教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るもの」

職務命令は正しい手続き・目的をもって発令されたもので、式典の円滑な進行という公共の利益を守るためのもの という理解ができます。

つまり、起立斉唱命令に違法性はく起立斉唱行為は思想を表明するものでもありませんでした。

ただ、最高裁でも起立斉唱命令が「間接的な制約」になると否定しておらず、思想良心の自由を「間接的に制約する」ことがあるという点は注意しておきましょう。 

確認問題 〇か×

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①公立高等学校の卒業式における国家斉唱の際に起立斉唱する行為は、学校の儀礼的行事における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり、同校の校長が教諭に当該行為を命じても、当該教諭の思想・良心の自由を何ら制約するものではない。(司法試験 H29 【第4問】 ウ)

②起立斉唱命令は、思想良心の自由を侵害しているため違法で許されない。 

解答  ①× ②×

 

類似する判例はこちらになります。

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