刑法判例【「秘密」「そそのかし」「取材の自由」】最高裁昭和53年5月31日

みなさん、こんにちは!

今日は、最高裁昭和53年5月31日判決を解説します。

最高裁全文はこちらになります。

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争点

「秘密」「そそのかし」とは何か、取材の自由がどこまで保障されるか。

判決

秘密とは

「非公知の事実であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいいその判定は司法判断に服するもの」 ⇒「本件の電信文案の内容は、実質的にも秘密として保護するに値するものと認められる」

そそのかしとは

「国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項所定の秘密漏示行為を実行させる目的をもつて、公務員に対し、その行為を実行する決意を新に生じさせるに足りる慫慂行為をすることを意味するものと解するのが相当である」

取材行為について

「報道機関の国政に関する取材行為は、国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立拮抗するものであり、時としては誘導・唆誘的性質を伴うものであるから、報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、そのことだけで、直ちに当該行為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではな」い。 

⇒そそのかしだけで違法性が推定されるものではない。

 

「報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべき

説得・要請を続けることは報道の目的によるものであり、社会通念上是認されるものであれば正当な業務行為である。

「しかしながら、報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでないことはいうまでもなく、取材の手段・方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであつても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるものといわなければならない

取材行為などが刑罰法令に触れなくても、社会観念上是認できないものであれば取材の行為を逸脱して違法となる。

これをもとに本件を考えると、被告人の取材行為は手段・方法において「到底是認することのできない不相当なものであ」り、正当な取材活動とは言えないとされました。

 

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