司法試験H23公法系科目第8問【財産権】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験H23公法系科目第8問を解説していきます。
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〔第8問〕(配点:3) 財産権の制限と補償の要否に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№14]から[№16])
ア.憲法第29条第3項にいう「公共のために用ひる」とは,公共の福祉のための必要に基づいて公共施設のための用地買収など公共事業を目的として行う場合に限られないが,特定の個人が受益者となる場合は,これに当たらない。[№14]
イ.憲法第29条第3項にいう「正当な補償」とは,その当時の経済状態において成立すると考えられる取引価格に基づき,合理的に算出された相当な額をいうが,かかる補償は,対象となる私有財産の収用ないし供与と同時に履行されなければならない。[№15]
ウ.憲法第29条の規定に照らせば,法律で一旦定められた財産権の内容を事後の法律で変更し,特段の補償を行わないものとしても,それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り,これをもって違憲ということはできない。[№16]
出典
アについて
公共のために用いるの意味は、公共事業のみならず特定の個人が受益者になるような場合であっても、それが公共の利益のためであれば個人の財産でも用いることができます。
そのため、解答は2となります。 特定の個人が受益者となるような場合には、農地買収などが例として挙げられます。
イについて
上記の行政判例では、憲法29条は正当な補償をすることにういて規定していますが、それは同時履行まで保障するものではないとしています。 そのため、解答は2となります。
ウについて
財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律で定められる(憲法29条2項)とされていることから、それに関して補償規定がなくてもそれが適合していれば、それが違憲となることは明らかです。
そのため、解答は1となりますが、私有財産を用いる場合には正当な補償があることに注意したいです。
ただ、これは条例の判例になりますが、正当な補償に関する規定がなくても29条3項を根拠にして請求することができるとしています。
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