司法試験H21公法系科目第8問【表現の自由】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験公法系科目H21第8問を解説していきます。
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〔第8問〕(配点:3) 次のアからウは,表現の自由の価値に関する文章である。aはある見解を要約したものであり,bはそれぞれの見解に対する批判である。bがaに対する批判となり得る場合には1を,批判となり得ない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№16]から[№18])
ア.
a.表現の自由が有する自己実現あるいは自己充足の価値を重視し,表現の自由の目的は個人の自律の保護にあり,表現の自由は思想・情報の送り手を保護する楯であると解する見解がある。
b.しかし,自己実現あるいは自己充足の価値を重視するこの見解によれば,商業広告のような営利的言論は,個人の自己充足とは無関係であるとして,憲法が保障する表現の自由に含まれないことになる。[№16]
イ.
a.表現の自由が有する自己統治の価値を最高度に重視し,民主主義の観点から表現の自由の絶対的保障を主張しつつ,表現の自由として憲法上の保障を受けるのは「公共的利害にかかわる事柄」のみであるとする見解がある。
b.しかし,表現の自由の絶対的保障を帰結するこの見解によれば,例えば性的言論は,「公共的利害にかかわる事柄」ではないとして,憲法上の保障を受けない言論とされるおそれがある。[№17]
ウ.
a.表現の自由が有する真理到達機能を重視し,真理の最上のテストは市場の競争において自らを容認させる思想の力であり,その競争で最後に残った意見が真理であるとする見解がある。
b.しかし,この見解は,「思想の自由市場」が必ずしも自由とは言い難い現実からして問題が残る。また,仮に「市場」が完全に機能しているとしても,最後に残った意見が真理であることを立証することは,不可能である。[№18]
出典
問題『公法系科目H21』
解答『公法系科目H21』
アについて
a の見解 表現の自由は思想・情報の送り手を保護するもの。 b の見解 商業広告のような営利的言論は保護されない。
a では「送り手」を保護するとしているのだから、営利的言論であっても送り手が保護される限りはその言論も表現の自由の保障を受けられると考えることができると思います。 そのため、解答は2となります。
イについて
a の見解 公共的利害にかかわる言論は表現の自由の保障を受けない。 b の見解 性的言論が表現の自由の保障を受けられない可能性がある。 適切な批判となっているので、解答は1となります。
ウについて
a の見解 最後に残ったものが真理である。 b の見解 最後に残ったものが真理と言えないこともある。 思想の自由市場とは個人の見解を述べたり批判することによって、真理に到達していくという考え方です。
ただ、これが正しく機能しない場合には誤った真理に到達することも考えられ、それが a に対する b の批判となっています。 そのため、解答は1となります。
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