司法試験H21公法系科目第16問【寺西判事補事件】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験公法系科目H21第16問を解説していきます。

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〔第16問〕(配点:2) 次の文章は,最高裁判所平成10年12月1日大法廷決定(民集52巻9号1761頁)の中で,裁判官に対する懲戒と憲法第82条第1項との関係について論じた部分を要約したものである。次のアからウまでの各記述につき,この見解に対する批判となり得る場合には○を,批判となり得ない場合には×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№30])

「憲法第82条第1項は,裁判の対審及び判決は公開の法廷で行わなければならない旨を規定しているが,右規定にいう『裁判』とは,現行法が裁判所の権限に属するものとしている事件について裁判所が裁判という形式をもってする判断作用ないし法律行為のすべてを指すのではなく,そのうちの固有の意味における司法権の作用に属するもの,すなわち,裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指すものと解すべきである。そして,裁判官に対する懲戒は,裁判所が裁判という形式をもってすることとされているが,一般の公務員に対する懲戒と同様,その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものであるから,裁判官に懲戒を課する作用は,固有の意味における司法権の作用ではなく,懲戒の裁判は,純然たる訴訟事件についての裁判には当たらないことが明らかである。したがって,分限事件については憲法第82条第1項の適用はないものというべきである。」

ア.裁判官に対する懲戒の裁判が行政処分の実質を有するとすれば,被処分者は裁判を受ける権利に基づきそれに対し不服の裁判を提起することができ,その裁判の対審及び判決は公開法廷で行われなければならない。

イ.裁判官に対する懲戒の裁判を非公開にすることは,裁判官の身分保障の弱体化を招き,司法権の独立が侵害されるおそれがある。

ウ.裁判官に対する懲戒の裁判が,固有の意味における司法権の作用ではないとしても,これを公開することで裁判の公正・中立に対する国民の信頼が確保されることを見過ごしている。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×

3.ア○ イ× ウ○ 4.ア○ イ× ウ×

5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

出典

問題『公法系科目H21

解答『公法系科目H21

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アについて

実質的に行政処分的な性質を有するとするのであれば、アで述べられるように判決に対する不服の裁判を行うことができるという見解が成り立つでしょう。 そのため、解答は◯となります。

イについて

行政裁判的な性質を有するからといって裁判を公開しないことは、公正に裁判が行われているということを知ることができず、何かに干渉されて司法権の独立が侵害される可能性があります。

また、「裁判官」というだけで懲戒裁判が非公開になると、その身分の保障も脅かされてしまうため、解答は◯となります。

ウについて

イで述べたように、裁判を公開することによって公正さを保ち、どちらにも中立な立場で裁判を行っていることを示すことができるでしょう。

そのため、解答は◯となります。 以上、ア=イ=ウ=◯なので解答は1となります。

 

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