司法試験H21公法系科目第17問【公の支配】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験公法系科目H21第17問を解説していきます。  

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〔第17問〕(配点:3) 次のアからウは,憲法第89条後段にいう「公の支配」に関する文章である。aはある見解を要約したものであり,bはそれぞれの見解に対する批判である。bがaに対する批判となり得る場合には1を,批判となり得ない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№31]から[№33])

ア.

a.「公の支配」とは,国又は地方公共団体がその事業の根本的な方向に重大な影響を及ぼし得るような権力を有することをいう。

b.この見解は,私学の自主性確保を重視するものであるが,現行法の私学助成が違憲となり現実的ではない上,「公の支配」に属する教育事業に公金を支出することを禁じていない憲法第89条後段と矛盾する。[№31]

イ.

a.「公の支配」に属する事業とは,国家の支配の下に特に法的その他の規律を受けている事業をいう。

b.この見解は,私学助成の現実的な必要性から,「公の支配」の要件を緩和するものであり,憲法第89条後段を空文化してしまう。[№32]

ウ.

a.「公の支配」の解釈は,憲法第14条,第23条,第25条,第26条など他の憲法条項との体系的解釈によるべきである。

b.この見解は,現行法の私学助成を合憲とするものであるが,体系的解釈によっては学校法人への助成を正当化することにはならない。[№33]

出典

問題『公法系科目H21

解答『公法系科目H21

89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 

アについて

a は厳格説の考え方であり、この見解は「私学の自主性」を尊重しています。 そうすると、私学助成をしないことと他の教育事業に助成をすることには、明確な理由があるということができるため、解答は2となります。

イについて

法や規律のもとに一定の支配が及んでいればいいとする緩和説であり、教育事業への支出を禁止する89条後段の意味がなくなってしまいます。 そのため、解答は1となります。

ウについて

a は中間説の考え方であり、上記条項などの体形的解釈によって私立助成は合憲と考えられています。

そして、89条後段の「公の支配」を公費乱用防止や中立性確保などと結びつけるのであれば、学校法人にも一定の支配が及び助成が正当化されるという b の批判が成り立つでしょう。 そのため、解答は1となります。

 

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