司法書士試験H28午前の部第20問【内縁関係】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士H28午前の部第20問を解説していきます。

 

第20問 内縁関係に関する次の1から5までの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものは,どれか。

1 Aの内縁の妻であったBが内縁関係解消の日から 300 日以内に出産した子Cは,Aの子と推定されるから,AC間には,Aの認知を要することなく父子関係が成立する。

2 AB間で内縁関係が成立した当時Aが 18 歳であった場合には,Aは,内縁関係の成立によって成年に達したものとみなされる。

3 AB間で成立した内縁関係がAの死亡により解消した場合には,Bは,Aの相続人に対し,離婚に伴う財産分与に関する規定の類推適用に基づいて相続財産に属する財産の分与を請求することはできない。

4 AB間で成立した内縁関係がAにより正当な理由なく破棄されたためBが精神的損害を被った場合でも,Bは,Aに対し,不法行為に基づき損害賠償請求をすることはできない。

5 内縁関係にあるAとBは,甲建物につき各自2分の1の共有持分を有しており,甲建物に居住していた。その後Aが死亡してCが単独で相続した場合には,Bは,引き続き甲建物に居住することができるが,Cに対し,相続開始の時から甲建物の賃料相当額の2分の1に相当する額を支払う義務を負う。

出典

問題『司法書士試験H28問題

解答『司法書士試験H28解答』 

1について

民法772条
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
民法779条
嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

内縁関係解消の日から300日にないに生まれた子は婚姻中に懐胎した子は772条より夫の子と推定されますが、嫡出でない子は父か母が認知することで父子又は母子関係が成立します。

アの場合、嫡出でない子Cがいるので、AC間で夫が認知することで父子関係が成立することになり、解答は✖となります。

2について

民法753条
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

未成年者が婚姻をしたときは成年に達したものとみなされますが、内縁関係が成立しただけでは成年に達したとはみなされません。 そのため、解答は✖となります。

3について

民法768条1項
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

判例:最高裁判決平成12年3月10日

協議上の離婚をした場合は財産分与を請求することができ、この規定は相手方が死亡した場合に準用されていません。 そのため、解答は◯となります。

4について

民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

判例:最高裁判決昭和33年4月11日

要旨では「内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し不法行為を理由として損害の賠償を求めることができる」と述べられます。

要旨によれば、内縁を不当に破棄された場合は不法行為を理由として損害賠償を請求できるので、解答は✖となります。

5について

民法703条

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

判例:最高裁判決平成10年2月26日

要旨では「 内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される」と述べられます。

内縁の夫婦が共同で使用していれば、一方の死亡後は他方が単独で使用する旨の合意が成立していたとみなされます。

そのため、BはCに対して703条に基づいて賃料相当額の2分の1に相当する額を支払う義務を負わず、解答は✖となります。