司法書士試験H28午前の部第18問【賃貸】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士H28午前の部第18問を解説していきます。

 

第18問 Aは,その所有する甲土地をBに賃貸し,その後,Cに対して甲土地を譲渡した。次の対話は,この事例に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

教授: そもそも,賃借人Bは,賃貸人Aに対して,自己の賃借権に対抗力を付与すべく,賃借権の登記をするように請求することができるでしょうか。

学生:ア 契約で別段の定めをしない限り,賃借権の登記をするように請求することはできません。

教授: それでは,AがCに甲土地を譲渡したのは,Bが賃借権について対抗要件を具備した後であったとします。この場合には,Aが有していた賃貸人たる地位は,Bの承諾がなくても当然にCに移転するのでしょうか。

学生:イ 賃貸人たる地位は,賃借人の承諾がなくても,当然に譲受人に移転します。

教授: Bが賃借権について対抗要件を具備していない場合であっても,甲土地の譲渡に先立ってAとCが合意することにより,譲渡の際,Aが有している賃貸人たる地位を,Bの承諾なく,Cに移転させることができるでしょうか。

学生:ウ 賃貸人たる地位は,賃貸借の目的物の譲渡人と譲受人が合意したとしても,賃借人の承諾がない以上は,移転させることができません。

教授: 次に,甲土地の譲渡に伴ってAの賃貸人たる地位がCに移転した場合を前提として質問します。甲土地についてAからCに対する所有権の移転の登記がされていない場合にも,BはCからの賃料の支払の請求を拒むことができないのでしょうか。

学生:エ この場合には,Bは,Cからの賃料請求を拒むことができます。

教授: 最後に,BがAに対して交付していた敷金について質問します。甲土地の譲渡に伴ってAの賃貸人たる地位がCに移転し,AからCに対する所有権の移転の登記もされた場合には,Bは,誰に対して,敷金の返還を請求することになりますか。

学生:オ 賃貸人たる地位は移転していますが,敷金の返還については,敷金契約を締結した相手方であるAに対して請求することになります。

1 アウ 2アエ 3 イエ 4 イオ 5 ウオ

出典

問題『司法書士試験H28問題

解答『司法書士試験H28解答』 

アについて

民法601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

特約がなければ賃借人は登記請求権を有しないとするのが判例の立場なので、解答は◯となります。

イについて

判例:最高裁判決昭和39年8月28日

要旨では「 一 自己の所有家屋を他に賃貸している者が賃貸借継続中に第三者に右家屋の所有権を移転した場合には、特段の事情のないかぎり、賃貸人の地位もこれにともなつて右第三者に移転するものと解すべきである」と述べられます。

賃貸継続中に第三者にその家屋の所有権を移転すれば、賃貸人の地位も賃借人の承諾なしにその第三者に移転することになります。 そのため、解答は◯となります。

ウについて

判例:最高裁判決昭和46年4月23日

賃貸人の義務の移転を伴っても特段の事情がなければ賃借人の承諾を必要としないとするのが、判例の立場になります。 そのため、解答は✖となります。

エについて

判例:最高裁判決昭和49年3月19日

要旨では「 賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しないかぎり、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗することができない」と述べられます。

所有権移転登記を経由しないと賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗できないため、その地位を取得しないCからの請求をBは拒むことができます。 そのため、解答は◯となります。

オについて

判例:最高裁判決昭和44年7月17日

要旨では「 建物賃貸借契約において、該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継される」と述べられます。

賃貸人たる地位も移転しているので、敷金の返還は新賃貸人に対して行うことになります。そのため、解答は✖となります。

以上、ウ=オ=✖・ア=イ=エ=◯なので解答は5となります。