司法書士試験H30午前の部第20問【夫婦の財産関係】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法書士試験第20問を解説していきます。
第20問 夫婦の財産関係に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 5 までのうち,どれか。 ア 夫婦は,婚姻の届出後に法定財産制と異なる契約をし,その登記をすれば,これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができる。 イ 夫婦の一方は,夫婦間でした契約であっても,婚姻が実質的に破綻した後は,夫婦間でしたものであることを理由として取り消すことができない。 ウ 夫婦の一方が相続によって取得した財産であっても,婚姻中に取得したものであれば,夫婦の共有に属するものと推定される。 エ 夫婦の一方は,夫婦の日常の家事に関する法律行為について,配偶者による代理権の授与がなくても,配偶者を代理してその法律行為をする権限を有する。 オ 夫婦の一方は,婚姻が破綻して配偶者及び子と別居しているときは,子の養育費を分担する義務を負うが,配偶者の生活費を分担する義務を負わない。 1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ 出典 問題『http://www.moj.go.jp/content/001266146.pdf』 解答『http://www.moj.go.jp/content/001266144.pdf』
アについて
民法756条
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
婚姻の届け出後に法定財産と異なる契約をして登記をしても、夫婦の承継人・第三者に対抗できないため解答は✖となります。
イについて
民法754条
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
判決では「民法七五四条にいう「婚姻中」とは、単に形式的に婚姻が継続していることではなく、形式的にも、実質的にもそれが継続していることをいうものと解すべきであるから、婚姻が実質的に破綻している場合には、それが形式的に継続しているとしても、同条の規定により、夫婦間の契約を取り消すことは許されないものと解するのが相当である」と述べられます。
754条にいう「婚姻中」とは形式的・実質的に婚姻が継続している状態のことを意味しています。
そこから、実質的に婚姻が破綻していれば754条に基づいて契約を取り消すことができないため、解答は◯となります。
ウについて
民法762条1項
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
婚姻前から有している財産や婚姻中に自己の名で得た財産は単独で所有することができ、共有に属するとは推定されないため解答は✖となります。
エについて
民法761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
要旨では「 一、民法七六一条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきである」と述べられます。
代理権授与がなくても761条により夫婦は他方を代理する権限を有することになるため、解答は◯となります。
オについて
民法760条
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
養育費はもちろん、婚姻の結果として生じる生活費についても分担する義務を負うことになります。そのため、解答は✖となります。
以上、イ=エ=◯・ア=ウ=オ=✖なので解答は3となります。